テーマ:書評

『悪魔の羽根』 ミネット・ウォルターズ

ウォルターズの11作めの長編小説、原作は2005年の発表です。 邦訳されているウォルターズ作品はすべて読んでいますが、ここ数年、ウォルターズの文章はだんだん読みやすくなっている印象があります。 近作の『遮断地区』などは、とくにそうでした。小説の構造的にも、かなりわかりやすく書かれていた。へそ曲がりで意地悪な私には、その「わかりや…
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「その女 アレックス」 P・ルメートル

これは技法の勉強になるミステリー。 フランスのミステリーというとジャプリゾの『シンデレラの罠』に代表されるように、なんだか迷宮に迷い込んだような読後感を与えるものが目立ちますが、この作品はそういうわかりにくさはありません。 むしろ現代英国ミステリーっぽい感じ。 主要な登場人物の私生活がしっかり書き込まれ、それが事件と有機的にか…
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「闇に香る嘘」  下村敦史

続いて、本年度の江戸川乱歩賞受賞作。 乱歩賞は今年が第60回になります。人間でいえば、還暦ですね。そんな記念すべき回ですから、しょぼい作品が受賞作になってはなァ…などと思っていたら、なんとまあ、ここ10年ではまちがいなくベスト、と言える傑作が登場しました。文字通り、10年に一度の作品でしょう。 作者の下村さんはミステリー作家志望…
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「推定脅威」 未須本有生

今年度の松本清張賞作品です。 清張賞は冠がビッグネームで、版元が文藝春秋という超有名出版社のわりには、バカ売れすることもなく、話題になることがさほど多くない。しかし受賞作のレベルは例年高く、「プロアマ問わず」と公言されているとおり、プロの応募が目立ちます。渋好みの実力派というか、ちょっと異質な感じのする新人賞です。 従来、時代小…
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「秘密」 ケイト・モートン

上下2巻、700ページ近い大作です。「忘れられた花園」で話題になったオーストラリア作家の新作。 タイプでいうと、作風や語り口が、最近の作家では、サラ・ウォーターズに似ている感じがします。 イギリス・ミステリーの好きな私としては、かなり好みの作品でした。 女性作家らしく、主要登場人物の多くが女性で、解かれるべき謎は「家庭の秘密」…
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「オリンピックの身代金」 奥田英朗

2008年に新刊が出た本で、2011年に文庫版が出ています。新刊本ではありませんが、放置してあったのを2020年東京オリンピックが決まったのを機に、読んでみました(……なんてミーハーな)。 私ごとですが、奥田英朗さんは現存の日本ミステリー作家のなかでは、かなり好きな作家です。 これまでに『最悪』『邪魔』『無理』の三部作を読んでい…
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「:戯作・誕生殺人事件」 辻真先

80才を超えてなお現役、辻真先さんの「スーパー・ポテト」シリーズ最新刊。この巻で、二人のあいだに赤ちゃんが誕生して、シリーズはいちおう完結、ということになっています。 今回は書評メインというより、昔話も交えつつ。 このシリーズは、もともと朝日ソノラマ文庫でスタートしたもので、第一作『仮題・中学殺人事件』が出たのは1972年(昭和…
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「イン・ザ・ブラッド」 ジャック・カーリイ

今や翻訳ものでは本格のエースとなった、カーリイの新刊ご紹介です。 しかし、ズバリ言って、今作はもうひとつ食い足りない印象。 読者が毎度、呆気にとられる独特のとんでも発想があまりなくて、手堅い良作におさまっています。年末ベストが発表される時期ですが、そのへんがどう評価されるのか。 もちろん良作ですから、読んで損はしません。充実し…
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「襲名犯」  竹吉優輔

本年度乱歩賞作品。 選評ではあまり褒めてもらえず、アマゾンのコメントでもさんざんの低評価が多い。 そんなにヒドい作なのかと、逆に興味をかきたてられて読んでみましたが、結論は「最近の乱歩賞作品とくらべて、べつにわるくないよ。取り立てて良くはないけど」というものでした。まあ標準作ではないですかね。 授賞式では東野圭吾・前推理作家協…
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「リバーサイド・チルドレン」 梓崎 優

このブログは「書評」メインのつもりなんですが、書評にもいろいろあって、大傑作だから書きたい、というものでもない。どんなに傑作でも、「誰が読んでも同じようなこと言うよね」的な本は、もうひとつ評してみたい意欲が湧きません。 でも、「これは一筋縄ではいかないぞ」という本だと、やる気が出る。 というわけで、久々に「ひとこと言わせろ」とわめき…
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「遮断地区」  ミネット・ウォルターズ

今年の2月末日に出た、当代ミステリーの女王、ウォルターズの新作です。 じつは4月頃、読んだのですが、その頃は小説外の仕事が立て込んで、忙しさに取り紛れていたため、感想をまとめるまでに至りませんでした。今になって「やっぱり、なんか書いとかなくちゃ」と思い直したのは、ミステリーの年度(10月末日まで)がそろそろ終わりに近づいたからです。 …
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「緑衣の女」 アーナルデュル・インドリダソン

まず第一印象は、内容はともかくとして、人名と地名がなんともわかりにくい…。 私は若い頃から、英米ミステリーに馴染んできたせいか、英語圏の名前なら多少めずらしいものでもわりと覚えられるのですが、フランス語圏、ドイツ語圏になると、やや戸惑う場合があります。 最近はもっと馴染みの薄いスウェーデンのヘニング・マンケルなども読みますけど、あれ…
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「ポーカー・レッスン」 ジェフリー・ディーヴァー

今やアメリカン・ミステリーの代表格になった、ディーヴァーの最新短編集です。 いきなりお金の話で恐縮ですが、この本、定価930円で16編が収められています。つまり1編あたり58円強。そのへんの喫茶店でコーヒーを飲んでも、この作品10本分はとられると思えば、超お買い得としか言いようがありません。 さて、どれもハズレなしの傑作良作ぞろ…
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綿矢りさ 「勝手にふるえてろ」

更新をさぼっているあいだに、はや1ヶ月が経ってしまいました。 このあいだ何をしていたかというと、長編第3作となる新作の執筆に没頭しておりました…と言えれば格好が付くのですが、あれやこれや雑事も多くて、あっという間にひとつき過ぎてしまったのが実情です。 それにしても、なんで、綿矢りさ? とお思いの方もいらっしゃるでしょう。綿矢り…
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スティーヴン・キング 「ビッグ・ドライバー」

この拙いブログを読みに来られる方で、スティーヴン・キングを知らない、という方はおそらくいないでしょう。なので、著者の紹介は省略しますが、ともあれ、当世「キング・オヴ・ミステリー」、S・キングの新作中編集ですから、誰が読んでもおもしろくないわけがありません。 収録作品は「ビッグ・ドライバー」と「素晴らしき結婚生活」の2編。 「…
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中町信さんの『模倣の殺意』について

これから書こうとしているのは、いわゆる書評ではありません。 というか、この作品は書評不能なミステリーなのです。中味の重要な部分にふれるとネタバレになってしまうし、ほかの作品との比較を書こうにも、それがまたネタを割ってしまう、という、とても難儀な作品だからです。 ですから、草原にいるライオンを、遠巻きにしながら眺めるような、そんな…
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「終わりの感覚」 ジュリアン・バーンズ

昨年のブッカー賞作品。本邦では暮れに新潮社のクレストブックの1冊として刊行されています。180ページあまりの、長めの中編。結論からいうと、純文学としての「グリップ」力と、サスペンスとしての「シャープ」さを持ち合わせた傑作です。 ブッカー賞というのは、イギリスの純文学作品に与えられる、ベスト・オヴ・イヤー賞ですね。過去にはサマセット…
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「64」 横山秀夫

昭和64年は、1月7日に昭和天皇が崩御されたので、1週間しかありませんでした。昭和元年は逆に、大正15年が12月25日に終わり、直ちに昭和に改元されたので、これまた1週間しかなかった。つまり昭和という時代は、その始まりの年と終わりの年がそれぞれ1週間だけだったのですね。これ、豆知識(おとなには常識でしょうが、大学生以下は知らないようです…
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「カラマーゾフの妹」 高野史緒

今年の江戸川乱歩賞受賞作。 乱歩賞って本来は新人賞のはずなのですが、今年の受賞者・高野さんはSF方面で何冊も著作のあるプロ作家だそうです。 例によって不勉強なので、私はお名前を知りませんでした。いや、じつをいうと、SF作家どころか、ミステリー作家でさえ、お名前を知らない方、ご著書を読んだことのない方がたくさんいらっしゃって、ギョ…
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「追撃の森」  ジェフリー・ディーヴァー

今やアメリカ・ミステリー界屈指の大ベストセラー作家になった、ジェフリー・ディーヴァー。彼のノン・シリーズ物新刊です。今年は海外物ミステリーが大豊作ですが、これはベスト10入り有力でしょう。というか、これほどの完成度の作品でさえ、ベスト5は確実、といえないあたりが、今年の翻訳ミステリーの充実ぶりを表しています。 ともあれ、ストーリー…
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「THE 500」 マシュー・クワーク

ハヤカワ・ミステリから7月に刊行された新刊です。著者のマシュー・クワークは、ハーヴァード大学で歴史と文学を学び、『アトランティック』誌で5年間、犯罪、軍事請負企業、麻薬取引、テロ訴追問題、国際犯罪などの記事を手がけたという人。これが処女作だそうですが、早くも20世紀フォックスが映画化権を獲得しているそうです。 タイトルの「THE …
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「キングを探せ」 法月綸太郎

昨年12月に刊行された、法月さん久々の「探偵・法月綸太郎」ものの書き下ろし長編です。 読んだのは、この3月。なのに、なぜ夏になるまで書評を書かなかったかというと、ひとつには、これ、ものすごく書評のしにくい作品なのです。つまり、非常にすぐれた工夫がなされている傑作なのですが、どこがどうすぐれているかを語ろうとすると、ネタを割ってしまいそ…
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「女中がいた昭和」 小泉和子

この次に書く作品の参考書として読んでいる本の1冊です。版元は河出書房新社。写真とイラスト、新聞記事などの資料がたくさん載っている「昭和モノ」で、大正の末期から昭和30年ごろまでを扱っています。 私くらいの世代〈昭和30年代に子ども時代を過ごした年代〉からみると、直接には知らないけれど、なつかしさを感じさせる写真や記事が豊富で、ついしみ…
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「ジェゼベルの死」 クリスチアナ・ブランド

本格ミステリーの大古典といってもいい作品ですが、恥ずかしながら未読でした。ずいぶん前から読みたいと思っていたのですが、これだけ有名な作品なのに、なかなか手に入らない。 1979年からハヤカワ文庫に入っていて、ときどき増刷もされていたようですが、最近はアマゾンでも新刊では手に入りません。しかたなく古書を買うことにしましたが、これが定価の…
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「夜の国のクーパー」 伊坂幸太郎

5月30日初版刊行の、できたてほやほや本です。私のブログでは、めったにない(笑)最新刊の書評ですね。 万事のろまな私になぜこんなことができたかといいますと、早い話が、版元の東京創元社で、伊坂さんの担当編集者がたまたま私の担当と同一人であるためです。つまり、担当から新刊本を送ってもらったから…それだけの話なんですけど。 なんとまあ…
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「苦役列車」ほか  西村賢太

「きことわ」の朝吹真理子さんと芥川賞同時受賞だった西村賢太さん。受賞記者会見での「フーゾクに行こうと思っていたけど、行かないでよかった」発言以来、作品ともどもその特異なキャラクターで、今や大人気ですね。 先日は「笑っていいとも」の、香取慎吾が司会する「課外授業」コーナーにも登場して、言いたい放題、さすがのタモリも沈黙して苦笑するのみで…
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「ローラ・フェイとの最後の会話」 トマス・H・クック

本邦でも根強いファンを持つ、トマス・H・クックの新作です。この本の原書は2010年刊行ですが、09年刊行の本(日本版は近刊予定)から、版元が今までの文藝春秋社から早川書房に変わったようです。それにともなって、翻訳版の容れ物が文春文庫からポケミスに変わっています。 で、前作の「沼地の記憶」が税込み860円だったのが、今作は1785円………
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「奇面館の殺人」 綾辻行人

1月に入手してあった『奇面館の殺人』をようやく読了しました。といっても、読んでいたのはこの3日間で、それまで気になりながらもなかなか手を出す時間がなかった…。なぜって、綾辻モノは何日もかけて、ちびちびと読む本じゃありませんものね。やはり、あの後半のたたみかけてくる「波」を楽しむには、ある程度まとまった時間をとって、集中して読まないとね。…
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「きことわ」 朝吹真理子

いま、今期の芥川賞作品の田中慎弥さん「共喰い」と、円城塔さん「道化師の蝶」をちょうど読みおえたところです。このブログはいちおうミステリーファン仕様になっていますので、あまり純文学の作品については取り上げませんが、ミステリーを書いているからといって、小説はミステリーしか読まない、というわけではもちろんありません。 純文学作品――とく…
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「人間の尊厳と八〇〇メートル」 深水黎一郎

昨年度、第64回の日本推理作家協会賞短編賞受賞作品(タイトルになっている作品がそれ)をふくむ短編集です。去年9月の刊行で、今ごろなんだ、といわれそうですが、そこは万事スローペースの当ブログのこととて、ひらにご容赦を。 作者の深水さんは慶應大学の大学院博士課程を終了後、フランスの2つの大学院で修士号を取得したという、正真正銘のインテ…
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