(元)ミステリー作家T・A  あさっての日記

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<<   作成日時 : 2008/12/13 21:21   >>

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今年も残り少なくなりましたが、恒例のミステリーベストテンが出そろいました。
 …ってか、多すぎないか、ベストテン。文春に「このミス」に早川の「読みたい!」に、イン・ポケットのもあるし、本ミスもある。ほかにもいろいろありますよね。まあ本ミスは本格ものにしぼっているから、いっしょくたにはできませんが、似たようなランキングが乱立すると、食傷気味になるのは確かです。

 そもそもミステリーといってもジャンルがいろいろあるのに、感性も好みも違うひとたちが読み、それを点数化・集計して何がわかるんだ、という批判があります。そのとおりだと思います。がしかし、べつに何かはっきりしたことがわからなくたっていいじゃん、という考え方もある。要は利用する側の使い方ってことでしょうね。私もこの流儀でやっています。

 たとえば自分と趣味の近いひと、あるいはすぐれた批評のできるひとをピックアップしておいて、そのひとの薦める本を読む。「このミス」はコメントを手がかりに、おもにこんなふうに利用しています。
 文春は自分も参加しているので言いにくいんだけれど、参考にざっとながめるくらい。というのもこの数年、「このミス」とランキングがほとんど変わらないからなんですね。今年のベストテンをみると、国内ものはなんと9冊が「このミス」とかぶっている。海外ものでも7冊が共通しています。
 こうなるとミステリチャンネルの「闘うベストテン」みたいな、個性的な書評家が独断を闘わせて選ぶほうがおもしろいと言えばおもしろい。おととしあたり出た、ストラウブの『ヘルファイア・クラブ』なんかは、ここでトップにランクされていましたが、たしかに傑作でした。

 しかし点数をトータルされて出てきたランキングも、それなりの意味があると私は思います。なにも1位から10位までを律儀に読む必要はありませんが、多くのひとに選ばれている作品には、なにかしらすぐれたところがある。まったく評価できないものが上がってくることは、絶無とは言いませんが、あんまりない。
 もちろん、「この作品がこの順位ってことはないだろう」と思うことは、しばしばあります。後がコワいから、具体的な例はあげませんけど(笑)

 ひとの好みというのは簡単には変わりませんから、読む本の範囲や傾向が限られてしまうことがある。そんなとき、自分の知らない作家、食わず嫌いしていた作品がランクインしているのを見たら、ちょっと読んでみる。こんなベストテンの利用法もいいと思いますよ。私もこの手で、お気に入りをけっこうふやしてきました。読んでみて、どうしても好きになれなければ、それはそれでいい。

 さて、今年のmy best3は、国内ものでは『ゴールデンスランバー』『ラットマン』『黒百合』、海外ものは『フロスト気質』『チャイルド44』『タンゴステップ』。
 もちろん未読のものもかなりあるので、読んだもののなかでは、という条件つきですけれど。注目株としては、大倉さんの『聖域』と高井さんの『漂流巌流島』、ティリエ『死者の部屋』とプリースト『限りなき夏』をあげておきます。

 『ゴールデンスランバー』はこのブログでも書評しましたが、とにかく巧い。構成の巧さ、ストーリーテリングの技巧がすばらしい。これはたぶん書き手なら、だれでもそう思うはずです。『ラットマン』と『黒百合』も評価ポイントは似ています。今年の国内ものはいずれも技能賞タイプといったところですか。
 ところで、ここで書評家の方々にひとこと言っておきたいのは、あらすじの紹介やコメントには、くれぐれも注意を払ってほしいということ。というのも、『完全恋愛』を紹介した、ある方の文章の、とある1行を読んでアノ仕掛けがわかってしまったからなのです。そのせいで、ラストのおどろきがすっかり消えちまった。それがなくても、じゅうぶんおもしろい作品ではありますが、でもやっぱり損をした気分はまぬがれませんでした(プンプン)。

 『聖域』と『漂流巌流島』はトモダチでもあるお二人が書いたから、ホメるわけではありません。ともにむずかしい素材にチャレンジして、みごとに結果を出したところに感心しました。いわば敢闘賞タイプ。

 『フロスト…』はもう、言うことなし。私のミステリーの好みはまず、ページが多いこと。キャラがいいこと。細部の描写がしっかりしていること、構成が堅牢なこと、そして謎が魅力的なこと。これがすべてそろっているんですから、ただただ、ありがたいのひとことですね。作者ウィングフィールドが亡くなってしまったのは、なんとも痛恨のきわみですが…このシリーズはあと2作、未訳が残っているそうです。
 『チャイルド…』はいま出ている「ミステリーズ!」に評を書きましたから、よろしかったら読んでみてくださいませ。あるタイプのドキュメンタリー、ホラーとしても読めます。

 あと『スリーピングドール』もよかったんですが、10月に検査入院したとき、ディーヴァーの未読作品をまとめ読みしたせいか、この作風にはちょっと飽きてしまったんだなぁ…。そのためか、いまひとつインパクトを感じませんでした。
 『死者の部屋』は、なんというか器用な作品。ひとつの物語に、サスペンス、サイコホラー、本格とあれこれ詰め込んで破綻していないのがえらい。このひとはうまくバケると、オールラウンドプレーヤーの人気作家になっていくかもしれませんね。プリーストは、これも私の好みのツボにはまる作家。短編もうまい。

 というわけで、今年もおもしろいミステリーをたくさん読むことができました。いつ読むのもいいけれど、これから寒くなる冬。暖かい部屋で、一日のなすべきことをし終えた深夜、熱いコーヒーと上質なチョコレートをかたわらに、楽しみにしていたミステリーをひもとく。そして時間をわすれて読みふける。…これに優る悦楽はありませんな。ああ、ありがたやありがたや。

 

 

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
「死者の部屋」はスルーしてました。読まねば!

「黒百合」も気になってます。余程の読書家でも誤読してしまうとか。

挙げられているもの以外だと「造花の蜜」もネットで評判が良いようですね。
これも読みたいと思ってますが、その前にまず「人間動物園」を読まなきゃな〜。
石ころ
2008/12/14 02:09
『黒百合』は初め見落としてしまいまして、再読してオオッと気がつきました。楽しめます。『造化の蜜』は未読なんですよ。私も、読まねば!です。
ほかにも気になるのが10冊はあるんだなぁ…幸せといえばシアワセ。
戸松淳矩
2008/12/15 00:52

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