(元)ミステリー作家T・A  あさっての日記

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zoom RSS 小保方晴子さんのSTAP細胞事件について(前編)

<<   作成日時 : 2014/03/28 09:35   >>

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この事件については、新聞・テレビ・週刊誌にネットも大騒ぎしたので、概要を知らない人はいないと思います。
しかし博士論文がコピペだらけだった、とか、上司と男女関係にあるらしい、とか、ホテル住まいだとか、本筋とは関係のないことばかりがショーアップされているようですね。
小保方さんが「ノーベル賞級の新発見」をしたときも、割烹着だとか実験室の壁がピンクだとか、デスクにぬいぐるみ(でしたっけ?)があるとか、彼女のキャラにまつわる、どうでもいい話ばかりクローズアップされました。

そこで、STAP細胞とはどんなもので、この事件のポイントはどこにあるのか、私なりに考えたやや気恥ずかしい結論のようなもの(笑)をここに書いてみたいと思います。
といっても、私は平凡な私大の文学部の出身で、科学的素養はせいぜい現代日本人の平均程度。どこまでちゃんと理解しているかは保証の限りではありません。

ただ、むかしから生物学、生命科学系には興味があって、一般向けに書かれた本はわりと読んできました。だから、この手の話題と相性はわるくない。
それと、現在温めているSFミステリーのアイデアがあって、それが遺伝子操作に関係するので、そちら方面の本をゆっくりと勉強しています。(もちろんハードSFを書く力はありませんから、ミステリーベースで一部がSF、というものですけれど)
そんなこともあって、この事件には最初から格別な興味を持ってきました。

さて、人間の男女がセックスして、精子と卵子が結びつくと受精卵ができます。
このプロセスについての話題も私はなかなか造詣が深いのですが、それはまあ措いておきます。ポルノ小説になってしまいますので。
人間はすべて、このたった1個の受精卵が分裂していくことから人間になります。生物はもちろんすべてそうですが。
しかし哺乳類の場合、たとえば神経になる細胞はいったん神経細胞になってしまうと、ほかの細胞に変わることはできない。神経になるものは神経に、筋肉になるものは筋肉にしかならない。体の仕組みが複雑な高等生物になればなるほど、この分化の固定化は強まるそうです。

ブラナリアという生物がいます。ウズムシという動物の一種で、ナマコみたいな格好をしています。こいつは全身の細胞が幹細胞でできています。
「幹細胞」というのは、まだ分化する前の、何にでもなれる細胞のこと。なので、ブラナリアの体をバラバラに切り刻むと、その1個1個からまた細胞が再生して、それぞれが完成体に成長します。
人間に置き換えると、クビを斬ったらクビが生えてくるわけで、ちょっとホラーですよね。打ち首獄門の刑なんてのは、まったく意味を成しません。獄門にさらしてる間に、体からは新しい頭が生え、クビからは新しい体が生えて、二人になってしまうんですから。

トカゲのしっぽ切りも同じ原理です。トカゲやイモリはしっぽや脚を切断しても、また新しいものが生えてくる。ピッコロ大魔王もそうでした。ピッコロって両生類もしくは爬虫類から進化した宇宙人なんでしょうね。

でも人間や哺乳類の細胞では、こういうことは起こらない。
もし起こせたら、たとえば腎臓の悪い人は、幹細胞を刺激して腎臓を新しく造り、それを移植すればいい。もともと自分の細胞だから生体間腎移植のような拒絶反応の心配もない。人工透析みたいに一人当たり五百万円も税金を補助する必要もありません。…これが再生医療の考え方ですね。

そこで「夢の万能細胞」をなんとか創り出そうと、科学者たちが研究競争を続けてきた。
その結果、創り出されたのがES細胞です。
ES細胞が最初に創られたのは、1981年のことで、ケンブリッジ大学のエバンス博士とカウフマン博士がマウスの初期胚からなんにでもなれる胚性幹細胞を創り出しました。
その後1998年になって、今度は人間の受精卵からヒトES細胞が創られます。

ですが人間の受精卵からES細胞をつくり、これを利用するには、問題があります。
受精卵はそのまま成長すれば人間になるわけですから、いわば他人の命を横取りして利用するようなものです。それを医学で行うのは、やはり倫理的な抵抗がある。
また、そこは無視するとしても、もとが他人の細胞なので、狙った組織を作れたとしても、移植してみたら拒絶反応が起きてしまう危険があります。
かといって自分が受精卵に戻るにはタイムマシンがいるし、受精卵にもどっちゃったら、今度は移植先の自分が存在しない…という下手なSFみたいな話になる。

さて、どうしましょう。そこで別方向から考えられたのが、クローン技術です。
これは卵細胞の核を取り除いて、そこに別の細胞から取り出した核を入れてやるもの。「核」とは遺伝情報、つまりDNAなどが詰まった部分です。
最初は羊でやってみて、誕生したのが有名なクローン羊「ドリー」でした。
これをもし人間の細胞でできたら、もともと自分の遺伝子を使うのだから拒絶反応は起きません。しかし、クローン人間を生み出すことにはやはり倫理的な抵抗がある。
なにしろ精子がなくても、卵細胞さえあれば、人間のコピーができてしまう。アインシュタイン級の頭脳や、ルノアール級の芸術センスや、ソフィー・マルソーみたいな美貌(これは個人的意見)を持った人物がかんたんにコピーできる。
つまり、オトコの生殖能力はいらなくなるのですから。
いや、そんなことより、再生医療のためだけに創り出されるクローン人間の人権はどうなるのか。まさにカズオ・イシグロが名作『私を離さないで』で描いた世界そのものです。
映画『ジュラシック・パーク』も夢物語ではありません。

とはいえ、クローン胚からES細胞を作れば、拒絶反応もなく、患者の必要とする臓器を新品に取り替えられるのだから、やはり再生医療としてはすごい進歩ではあります。

ところが、ここでiPS細胞というものが出現する。
ノーベル賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授の創り出したアレですね。
これは「人工多能性幹細胞」といって、すでに分化してしまった細胞に、特定の遺伝子を送り込むことで、細胞を初期化できるというものです。
ちなみに、遺伝子を送り込むにはレトロウイルスベクターという、ウイルスから作るリボ核酸を使いますが、このレトロウイルスというやつは、よそから遺伝情報をコピーしてきて、別の細胞にコピーしてしまうという、変わり者なんですな。
しかし生物進化はこいつが主役なんじゃないか、というレトロウイルス進化論という説もあります。ダーウィンの考えた突然変異からの適者生存ではなくて、ウイルスが一斉に進化の方向を変えてしまう、という説です。
素人考えですが、私はこっちの方がおもしろいと思います。

さて、iPS細胞ですが、これを使えば、倫理的問題も起きないし、拒絶反応もクリアできるし、もっとも「使える」再生医療技術であることは疑えません。
だから世界中の研究機関が実用化に向けて、モーレツな競争を繰り広げています。
わが国でも、研究予算が150億円つきましたね。
山中先生が研究室スタッフのために自腹を切っていたころから考えると、隔世の感があります。

これでもう、再生医療については勝負あった、と思われたのですが、そこへ「待った、待った」と名乗りを上げて乗り込んできたのが、われらが小保方晴子博士――私は「こじはる」ならぬ「オボハル」と呼んでいますが――のSTAP細胞でありました。(後編に続く)




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