ミステリー作家戸松淳矩 あさっての日記

アクセスカウンタ

help リーダーに追加 RSS 飾らない人柄といったらこの人、倉知淳さん

<<   作成日時 : 2008/05/09 13:31   >>

トラックバック 4 / コメント 7

え〜、書いてる本人もすっかりその存在を忘れていました、「ミステリー作家の人となり」シリーズ。しばらくぶりの復活ですが、今回ご登場ねがうのは、本格派の名人・倉知淳さんです。本格ファンならとうにご承知のように、本格ミステリ大賞の第1回受賞者でもありますね。

 はじめてお会いしたのは、もう4年くらい前になりますか、吉祥寺のtrick+trapに呼ばれて行ったら、そこに倉知さんがいらっしゃった。もちろん初対面でしたから、お顔も存じ上げない。なんだか小熊みたいなおっさんがいるなーと思っていたら(失礼!)、それが倉知さんだった。
 お名前はもちろん知っていましたし、版元から送られてきた著作も読んでいたので、さっそくご挨拶したのですが、そのときのお話がまたなんとも脱力系。

『星降り山荘の殺人』や『壷中の天国』の印象から、いかにも切れ者タイプのちょっとコワイ人かも…と思っていたところ、まるで予想が外れていたのです。たとえば「具体的に作家を志したのはいつごろですか」という質問に、倉知さんはどんなふうにお答えになったか。
「うーん。…ほんというと、作家だっていう自覚ないんですよ、わたし。なんとなく、気がついたら、そうなっていたみたいな感じでねぇ」
「ははぁ…そういうものですかねぇ」
「うん。だって、わたし、いまでもアルバイターのつもりですもん。アルバイトやりながら書いてるうちに、あれ、これならバイトやらなくても食えるんじゃないのか…と思いまして。で、そのまま書いてるみたいな」
「……」
「だから気分はアルバイターなんですよ、たぶん」

 どうですか、この肩の力の抜けっぷり。そういえば、倉知さんの人気シリーズに「猫丸先輩もの」がありますが、あの猫丸先輩のキャラクターは、倉知さんご自身のキャラがかなり反映されていると思いますよ。とにかく、格好をつけない、気取らない。そこが逆に、ある種のかっこよさになっている。

 そのあとtrick+trapに泥棒が入るという事件がありまして、レジを壊して現金だけを盗まれた。ところが本は一冊も盗まれていない。乱歩の『貼雑年譜』なんという稀覯本もあったのに、それには目もくれていないんですな。trick+trapの常連客のあいだではしばらくこの話題で持ちきりでしたが、それからまもなく倉知さんにお会いしたので、すぐにその話になった。
 儲かってもいないのに泥棒まで入ったんじゃ戸川さんも災難だねー、とおしゃべりしているうち、
「しかし、あの店は行きずりに盗みに入るっていう場所じゃないよね。犯人は絶対、下見に来てると思いますよ。けれど常連客ではない。なぜかというと…」
 と倉知さん、推理を始めちゃいました。
「そうですよね。本は盗んでない。だから本好きの人間じゃないと思うな」
「そりゃそうだよなあ。本好きなら、まずそっちに気が行くよねー。宝の山に入ったみたいなもんだもの」
 しばし考え込んだ倉知さん、そこからいかなる名推理を展開するかと思いきや、
「…うーん、そうだなあ。オレならどの本を盗るかなぁ…」
 おいおい。なにを考えてるのかと思ったら、そっちかよ。
 もちろんこれはジョークですが、そのあとも倉知さんはしばしばtrick+trapに出かけていたようです。たしか、閉店のお知らせが出たときも、いちばん早く顔を出したおひとりだったはず。天真爛漫系のキャラだけれど、おとなの気配りはしっかりされる方なんですね。

 そういえば、倉知さんとはお互いの著作についての話をしたことがない。
「いやぁ、オレ、遅筆なもんだから、あまり自分の本のことは話さないんですよ」
 とおっしゃっていたけど、なにを隠そう、遅筆にかけては私のほうがはるかに上ですから(…って、そんなとこで威張ってどうする!)。
 しかし他の作家の本を批評しあったことはあります。その内容については各方面への影響(笑)を考慮して割愛しますが、こういうときの倉知さんはけっこうコワかった。その批評が鋭いこともありますが、目が真剣です。ふだんの親しみやすい小熊顔(ふたたび失礼!)が、オオカミ王ロボ…の弟くらいにきびしくなるんですな。ああ、ご自分ではアルバイター気分だなんて言ってるけど、やっぱりこの人は根っからの作家なんだ、と感じさせられた瞬間でした。

 家はおたがい近いんだけど、私がめんどうがりの出不精なせいか、それとも倉知さんがあまり業界パーティにお出にならないのか、最近はとんとお会いするチャンスがない。ぜひ、近いうちに、遠くからでもにこにこ笑いかけて来られる、あのベビーフェイスにお目にかかりたいものです。
 ついでながら、タイトルバックに使っている「猫」のイラストは、「猫丸」先輩へのrespectのつもり…なんですけど。



 

設定テーマ

注目テーマ 一覧

月別リンク

トラックバック(4件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
O型
O型 ...続きを見る
O型
2008/05/31 21:45
思いやり 意味
思いやり 意味 ...続きを見る
思いやり 意味
2008/06/10 00:04
心理テスト おもしろ
心理テスト おもしろ ...続きを見る
心理テスト おもしろ
2008/06/13 00:29
できる人の勉強法
できる人の勉強法 ...続きを見る
できる人の勉強法
2008/06/14 03:27

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
酔っての舌禍は数知れず。
過日、倉知さんにお会いしたとき、その“小熊”容姿が、わたしが考える猫丸先輩そのもの(唐沢なをきのイラストとは大分違うけど)と思われたので、つい「猫丸先輩のクーロンですね」と言ってしまった。空論(猫丸先輩の空論) → クーロン → クローンのつもりでした。全くご理解いただけず、説明したら「なんか気持ち悪いなあ」とおっしゃって、こっちは酔っていたけど、多分、ロボ目で睨んでいたのではと思うと…。
藤岡真
2008/05/09 15:43
…それはちょっとコワいかも(^_^;)
でも、作者を投影した主人公はめずらしくないとはいえ、猫丸先輩はご本人としか思えませんね。
はじめ、1行目の「酔っての舌禍」が倉知さんのことかと勘違いして、へぇ倉知さん、そんなとこもあるのかなぁ、と思ってしまいました。
藤岡さんご自身のことでしたか。まあ、それなら納得…なんて言ったら、こちらがロボ目で睨まれちまうかもしれませんね。いえ、もちろん、ほんの冗談ですが。
戸松淳矩
2008/05/09 23:56
>藤岡さんご自身のことでしたか。まあ、それなら納得

やはり……。
藤岡真
2008/05/10 09:42
倉知さんが、どなたのどんな作品を論評されたのか、気になります…。でも部外秘なんでしょうね
作家志望
2008/05/10 12:00
それはやはりね…。各方面との交友関係もありますので(笑)ご勘弁願います。チラリと漏らしますと、そのときかなり評判を呼んでいたある作品について、あれは前例があるのでは、というような…まあそんなことでして、はい。
戸松淳矩
2008/05/10 22:44
丁度今頃の話かな……。
石ころ
2008/05/10 23:05
ん…? 5秒くらい考え込んでしまいました。ああ、なるほどね、そういうことですか。うーん、イイ線を行ってますが、アレではありません。
まあ、この件はこのくらいにしておきましょうか。いろいろ追及されるとばれちゃいそうなんで…汗。
戸松淳矩
2008/05/11 20:32

コメントする help

ニックネーム
本 文