(元)ミステリー作家T・A  あさっての日記

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zoom RSS 「その女 アレックス」 P・ルメートル

<<   作成日時 : 2015/02/14 22:13   >>

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これは技法の勉強になるミステリー。
フランスのミステリーというとジャプリゾの『シンデレラの罠』に代表されるように、なんだか迷宮に迷い込んだような読後感を与えるものが目立ちますが、この作品はそういうわかりにくさはありません。
むしろ現代英国ミステリーっぽい感じ。

主要な登場人物の私生活がしっかり書き込まれ、それが事件と有機的にからんでいく。
読者の意表を突く、大きな仕掛けもほどこされていますが、作り物感はない。じつにリアルです。
仕掛けといっても、狭い意味のトリックではありません。
小説の構造そのものが意外なカタチをしている、とでもいいますか。

家具店だと思って入ってみたら、画廊になっていて、かと思うと、じつはアンティークなインテリアと絵画で雰囲気を出す、すてきなレストランだった。
そんな造りになっています。たしかに斬新です。
こういうカタチのミステリーはありそうで、なかなかなかった。

そして創作をしている人なら、これは使える、と思うはず。
このワザを使うと、ありふれた物語でもまったく新しく見えてきますからね。

ただ、この結末は、私は好みではない。
創作技術的にはわるくない、というか、むしろすぐれていると思います。
けれど、思想的に…というと大げさですが、これは間違っていると思います。

私はある意味、人間など信用ならないと考える、バークリー流の保守主義者(政治イシューではなく、人間観からいって)なので、イギリス風の「法の支配」を信奉します。
こういう、ある意味、水戸黄門的?な解決には危険を感じてしまいます。

そこだけが唯一マイナスでしたが、さすがにベストテントップの作品ですね。必読。
私的には、昨年度の翻訳物では、『秘密』に次いで2位にランクしました。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
私もついこの間ようやく読みました。
確かに凄いトリックがあるという訳ではないですけど、三部構成でくるくると変わっていくような物語に引き込まれ、真相には驚かされました。
新しいものを発明しようとするよりアプローチを変えていくというか、こういう作劇は現代ミステリーのお手本なのかも知れませんね(と言いつつフィルポッツの「三死人」を思い浮かべたりもしましたが……)。

ちなみに結末の付け方は私も賛成できません。クラシック本格にもちょいちょいこういうのありますよね。
石ころ
2015/02/18 15:55
フィルポッツを思い浮かべるとは、相当のベテランさんですね。いや、これまでのお話でもそうだろうとは思っていましたが。
ミステリーはアイデア、素材も大切ですが、見せ方も大事だとこの作品を読むと、よくわかります。
これまでになかったアイデアというのはめったに見つかりませんが、見せ方ならまだ工夫の余地があるなと思いました。
結末は「犯人」に対して探偵がアンフェアをするので、モダニストとしての私はうなづけませんでした。まあ気持ちはわかりますが。
…じつは、去年はあまりミステリーを読めなかったので、これが久々でした。
戸松淳矩
2015/02/18 20:45

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