(元)ミステリー作家T・A  あさっての日記

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zoom RSS 小保方晴子さんのSTAP細胞事件(後編)

<<   作成日時 : 2014/04/04 20:28   >>

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というわけで、iPS細胞に次いで、彗星のように現れたSTAP細胞ですが、理論的なことは一般人にはちんぷんかんぷんですから、発見者がまだ30才の女性研究員で、顔立ちもわりと可愛いし、実験室では白衣でなく、おばあさま譲りだという割烹着を付けているとか、壁をピンクに塗ってムーミンのキャラを集めてるとか、「女子ポイント」が高そうなことも相まって、たちまち大人気となりました。

もっとも、あの割烹着は最近売り出されたものだというし、壁を塗ったのも彼女の要請ではなかったという話もありますから、どうやら「小保方ブーム」は理研の研究チームぐるみで仕込んだものらしい。
そもそも博士論文一本しか書いていない、30才の女性がユニットリーダーになることは、あまり例がないとも言われます。最初から彼女をスターにして、そのブームに乗ってSTAP細胞をアピールしよう、という理研側のもくろみがあったようです。

というのも、STAP細胞は彼女が中心になって開発したものではないからです。
もともとのアイデアは、ハーバード大学のバカンディ教授、東京女子医大の大和雅之教授などが持っていました。
考え方としては、すごく単純化してまとめると、
「イモリなどはシッポを切断されるという外部ショックを受けると、細胞が初期化してふたたびシッポを作り出せる。もしかすると、哺乳類の細胞のなかにも、なんらかの外部刺激によって初期化する機能が眠っているかもしれない。それを探してみよう」
というものです。
…シロウトが考えても、なるほど、そういうこともあるかもしれまへんなあ、という気がしますよね。

で、バカンディ教授のほかに理化学研究所の笹井芳樹さん、若山さん(今は山梨大学教授)などがチームを作って、実験を始めた。その重要な現場を担ったのが、われらがヒロイン・オボハルこと小保方晴子さんでした。
ですから、これは若い女性研究員がひとりでコツコツやっていたら、たまたま大発見が見つかった、というようなものではないのです。
なにしろ共同研究者のメンツがすごい。
笹井さんは、ES細胞からさまざまな器官を作り出す技術にかけては、世界的なスター研究者。若山さんはクローンマウスを作る技術、細胞核を操作する技術の世界的権威。
コボハルのチームには、こんなすごい人たちが揃っていたから、あの「Nature」の論文もらくらく査読に通ったのです。けっして、小保方さんひとりの画策でなんとかなるような、そんなちゃちな話ではない。

この「事件」のポイントのひとつは、実際に細胞に刺激を与えて、STAP細胞を作る段階の作業を担当していたのが、小保方さんひとりだったということです。
若山さんの仕事は、小保方さんが「できましたー」と持ってきたSTAP細胞を培養して、たしかにこれが万能細胞であることを確認する作業です。
だから、この一件に疑惑が出て来たとき、まっさきに記者会見に応じたわけです。彼自身、にせものを渡されていたとしたら、被害者なのですから。

さて、どうやってSTAP細胞を作ったか(あるいは「作ったと思った」か)というと、電気泳動という実験をおこなって、その結果で確認します。
なんだかむずかしげですが、電気泳動実験そのものは大学医学部の1年次の教科書にも出て来るもので、ポピュラーなものです。
小保方さんは白血球細胞にあるT細胞を使って、この実験をおこないました。

T細胞とは、ノーベル医学生理学賞を取った利根川博士が研究したものですが、白血球の特性で、外から入ってきたウイルスや細菌と戦うため、多様な物質を識別する受容体を持っています。
その種類がものすごく多いんですな。
そりゃそうでしょう。外から体に侵入してくる異物はむちゃくちゃ多いのですから。
T細胞は、むちゃくちゃ多い外敵に対抗するため、遺伝子の一部を相手に合わせて組み替えているのです。
これを使うと、どこがいいのか。
遺伝子の一部を組み替えているから、それぞれに特徴がつかみやすい。つまり追跡しやすいからです。

ところが、この実験の電子顕微鏡映像に、どうやらオボハルは手を加えたらしい。
となると、実験が成功していたという話は、当然、疑わしくなりますよね。

そのへんのくわしい説明は、私の手には余りますので、興味ある方は理研のホームページなどで確かめてみてください。いちおう、専門家でなくてもわかるような説明はされていると思います。

さて、ここからは科学的な説明ではなくて、事件の背景を推理してみます。
まずオボハルの就いていたユニットリーダーという地位ですが、一般会社でいうと、プロジェクトチームのリーダー、まあ課長職くらいに当たります。
年収一千万円弱。
弱冠30才の女性、それも博士論文しか書いていない人が、なぜいきなり課長なのか(ちなみに「弱冠」はもともと二十歳の男子に使う言葉だったそうです)。
しかも博論の査読をした人にはバカンディ教授も名を連ねており(実際には読んでいない)、この人事が理研ぐるみで行われたことを暗示させます。
小保方さんは、やはりキャンペーンガール、看板娘、ウグイス嬢として抜擢されたのではないでしょうか。
だからこそ、こんな事態になると、彼女ひとりに罪を負わせて、それこそトカゲのしっぽ切りをしようとしているのではないか。シッポは切り捨てても、どうせすぐに新しいシッポが出来る、というのでは悪い冗談にしか聞こえません。

しかし、オボハルが実験資料の捏造をしたことは、もはや疑いを免れない。
本人はミスだったと主張して、悪意ではなかったと言っています。もし悪意でやったのなら解雇は当然で、科学者としても事実上、追放処分ということになります。ですから絶対に悪意は認めないでしょう。
4月1日の理研の説明に、本人は「とても承伏できない」と述べて、法廷闘争も辞さないかまえですから、真相究明にはずいぶん時間がかかりそうです。
けれど、私自身は、状況から見る限り、小保方さんはたぶん当初、STAP細胞が本当にできた、と信じ込んだのだと思います。
というのも、彼女が実験に使ったのはマウスの幼体の細胞ですが、幼体の場合、未分化の幹細胞が紛れ込むことがあると聞くからです。
彼女はそれを見て、「成功した!」と思い込んでしまったのかもしれません。そしてそれを上司の笹井さんやパートナーの若山さんに伝えた。チームのメンバーは大喜びしたに違いない。
若山さんはそこで渡された細胞をもとにして、キメラマウスまで作ってしまったんですから。

キメラマウスというのは、受精卵が細胞分裂を始めた初期の胚に、多能性幹細胞を注入して、おとなにまで成長させたマウスです。つまりこのマウスには、もともとの受精卵の親2匹と、幹細胞の親2匹、あわせて4匹の親がいます。だから、あちこちがまだらに遺伝を受け継いでいる。
たとえばイチローと堀北真希が両親の受精卵に、山中伸弥博士と綿矢りさが両親の幹細胞を入れて、キメラ人間を作ったら、運動神経がイチローで、顔が堀北真希、理系の才能が山中伸弥で文才が綿矢りさ、みたいな子供が出来た、というようなもの。オリンピックに出るわ、女優になるわ、ノーベル賞は取るわ、芥川賞は取るわ、すばらしいですよね。…ま、それはただの空想話ですけど。

さて、ところが、ある瞬間に、彼女はそれがミスによる幹細胞の混入だったのかも? と気がついた。だが、もう引っ込みがつかない。そこで資料のつじつまを合わせ、若山さんに偽の幹細胞を渡したのでしょう。
彼女自身は、今でも、「ひょっとして実験はほんとに一度は成功したのかも」と考えているような気がします。
彼女の意外とも思えるほどの粘り強さは、その観念に基づいているからではないでしょうか。
それともうひとつは、組織ぐるみで自分を持ち上げ、ヒロインにしておきながら、その期待に応えようとした自分をスケープゴートにしようとしている理研への怒り。

そもそもこのSTAP細胞グループが早急な結果を求めたのは、山中教授たちのiPS細胞がめざましい成功を収め、今や研究予算が150億円もつくようになったことへの、焦りがあったからです。
再生医療技術は、今や世界の医療業界の注目の的で、巨大資本が虎視眈々とビジネスチャンスを狙っている、激烈な戦場なのです。科学者が世俗を離れて、じっくりと真理を探求する場などではありません。
ほぼiPS細胞に決まりかけている再生医療のニューワールドを、なんとかして遺伝子操作ではない、もっとかんたんな方法で開拓したい。
学問的野心、プラス、巨大資本の欲望が渦巻く、おそるべき戦う男達の世界。
まかり間違って、そんなところでヒロインになってしまった、気の毒な生け贄。そんなふうに彼女が見えてしまうのは、私が若い女性にヨワい、スケベ親父だからでしょうか。

違います。なぜって、この小保方さんは、どう見ても、本当に知的レベルの高い女性とは思えないからです。データの捏造の仕方も、全然違う実験のデータを平気で持って来ちゃうとか、周辺情報の処理をしないから映像の切り貼りが見え見えだとか、とにかく雑。
とても完全犯罪を企て、やってのけるようなタマだとは思えません。この女性が世界的にも有名な先生たちを手玉にとって、あわよくば世界の科学界を騙してやろうなどと考えるとは思えないのです。
この人は博士論文でも堂々とコピペしていたように、けっこうテキトーな人で、緻密な人ではありません。研究チームでもリーダーとはいうものの、担当していたのは、頭脳労働というより、ひたすら条件を変えて実験を繰り返す肉体労働。

というわけで結論を言うと、この事件は理研という科学利権と学問的野心のフィールドに、小保方晴子というそこにいるべきではない、アバウトな人物がミスキャストされた結果、起きたものだと思います。
もちろん日本の科学行政だとか、学問的成果がビジネスに直結してしまうグローバリズムだとか、博士号を持ちながらバイトしかない大量ポスドク問題とか、いろいろな難問がそこには内在しています。

しかし「事件」は「状況」だけでは起こらず、「キャラ」によって起きる。そして「物語」となる。
だからミステリーは不滅なのですよね。自画自賛。




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内 容 ニックネーム/日時
私は「賞賛されるであろう記者会見には着飾って出て来る癖に、責められるであろう記者会見からは逃げるのかよ!」と思っていた人間でしたが、記事を拝読しますとどうやら彼女にも同情の余地があるのですね。
まあでも「とても承伏できない」ならばやっぱり記者会見を開いて堂々主張して欲しいな。
石ころ
2014/04/04 22:55
同情の余地というか、理研という組織にいちばんミスキャストな人を抜擢した悲劇…もしくはその問題点を暴き出すには最適な人だった、と言いますか。いつかは問題とされたであろうことを、彼女がひとりでぶちまけてくれた感がありますね。どちらにも気の毒といえば気の毒。
しかし肝心のSTAP細胞が一時的にでも、あったかなかったかは「やぶの中」ですから、かなり長引きそう。いつのまにかうやむやになる、日本の伝統芸が発揮されそうな気がします。
戸松淳矩
2014/04/05 16:56
科学界をだまそうとして捏造したにしては雑すぎ、との御意見には同感です。
しかし、たくさんの科学者がかかわって分業体制はできていても、チェック体制はできていなかったということでしょうか。普通の会社なら、新製品なり新技術が社内のチェックを受けずに世に出るということはありえないと思うんですが。
実験が再現できないという声が高まった時に、詳細な実験手順を追加で公開しましたが、あれは何だった(あの時はどういう状況だった)んでしょうかね。
若月
2014/04/05 22:59
開放血管系リンパのすり抜けメカニズムの一つ?成り済まし万能細胞‥
未蛙
2014/04/06 00:42
>若月さん
そこは外部から見て、謎のひとつですね。ある科学研究者は「科学者は性善説がベース。仲間は嘘をつかないと信じている。いちいち疑いを持っていては雑務が増えて研究にならない」と言っていますが。そういうものなんでしょうか。
しかしこれで文部科学省が旗振りして「研究のチェック体制を」とか言い出して、それがまた天下りの受け皿に…という危惧も。
再現実験ができないのは、刺激を与えるときに、小保方さんしか知らない特殊なテクニックがあるからだ、という話が出て来て、それで詳細な手順を…という話になったようです。
戸松淳矩
2014/04/06 04:52
>>未蛙さん
すみません。コメントが専門的すぎて、内容がよく理解できませんでした。
戸松淳矩
2014/04/06 05:22
‥神戸大学総長学士院学説由縁の情報伝達物質受容体蛋白燐酸化酵素玄米薬巧成分の遺伝子発現経路剥ぎ取りの上酸欠嫌気雰囲気で燻養してリボ核酸経路の発現制御万能細胞化/神戸の理研?
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トーファーの兄未蛙だす
2014/04/06 16:48
90%同意です。
世の中、どうして小保方バッシングに走るんでしょうね。
この事件に関しては、群衆心理の怖さの方が印象が強いです。
”トーファー兄未蛙だす”さんのコメントは全共闘世代感が半端なくてなつかしい(って私はもっと若いですが)
ミステリー小説家の意見は思ったとおりでし...
2015/02/11 08:29

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