(元)ミステリー作家T・A  あさっての日記

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zoom RSS 「ポーカー・レッスン」 ジェフリー・ディーヴァー

<<   作成日時 : 2013/09/09 18:31   >>

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今やアメリカン・ミステリーの代表格になった、ディーヴァーの最新短編集です。
いきなりお金の話で恐縮ですが、この本、定価930円で16編が収められています。つまり1編あたり58円強。そのへんの喫茶店でコーヒーを飲んでも、この作品10本分はとられると思えば、超お買い得としか言いようがありません。

さて、どれもハズレなしの傑作良作ぞろいですが、私の好みで順位をつけると、
1位 一事不再理
2位 動機
3位 通勤列車
4位 ポーカーレッスン
5位 監視

「一事不再理」
やり手で、金のためならどんな裁判も引き受ける弁護士に、どうみても救いようのないバカ犯罪者の弁護依頼が舞い込む。依頼人は被告の叔父。弁護士は辣腕を発揮して、有罪確実と思われた判決をひっくり返して無罪を勝ち取る。一事不再理の原則で、たとえあとで有罪とわかっても、一度無罪が確定したらやり直しはない。ところがそこから事態は一変して、あっとおどろくどんでん返し。

「動機」
有能な刑事が犯人を捕まえ、自白も証拠もそろったが、犯人は犯行動機だけは明らかにしない。
刑事はなんとかそれを探ろうと、犯人とのあいだに信頼関係を醸成するよう努めます。そして、どうやら真相らしきものを語らせることに成功したが――戦慄の事実がわかるラストは、想像力を刺激されて思わずゾッとします。

「通勤電車」
皮肉きわまるサスペンス・ストーリー。悪意ある人物が最初から計画的に仕掛けてくる、という話ではなく、偶発的なことを利用するわけですが、主人公の運の悪さには同情します。
通勤電車のなかでケータイを使っている男が、隣の席の乗客に注意される。それだけのシチュエーションなのですが、そこからのトンデモな展開には舌を巻くしかありません。

「ポーカーレッスン」
腕っこきのポーカーギャンブラーのところへ、18歳の少年が勝負したいからあんたのゲームに加えて欲しいと、
申し込んできます。男は「子供とはゲームをしない」と断ろうとしますが、少年が両親を亡くし、大金を相続していることを知って、承諾します。
さて大金を賭けた勝負は、男が優勢に進めますが、意外な展開に。
この少年はどんなマジックでプロの勝負師に挑もうとしたのか、という話かと思っていたら、もう一段、どんでん返しが仕掛けてありました。意外性があって、なるほどと感心させられます。

「監視」
話のつくりは、この作品集のなかでたびたび使われているものです。こちらが仕掛けているつもりだったのに、じつは相手の仕掛けに乗せられていた、というパターン。
しかしその練り込んだ手口がすごい。小技が二段、三段と仕掛けられていますから、まず真相は見抜けません。

このほか、話としてはわりと単純ですが、「生まれついての悪人」が私の好み。ある年寄った女は娘との折り合いが悪く、しかも娘から憎まれていることに悩んでいます。どこで育て方を間違えたのだろうか――。するとある晩、拳銃を手にした娘が女の小さな家に乗り込んできて……ここからが、1行で世界が変わる鮮やかなどんでん返し。ディーヴァーの騙しの語り口の巧さが光ります。

私は、こういう上手いつくりの作品を読むと、それを要素に分解して、この作品のどこが上手いのか、アイデアは平凡だが構成が上手いのか、アイデア自体が心理のすきをつくトリックに通じているのか、どんでん返しの質はどんなものか、大技一本か、小技の巧みな組み合わせか、などなど、わるいアタマなりに精一杯いろいろ考えてみます。
もちろん、物好きでやっているわけではありません。個別作品から応用の利く一般原則を引き出しておけば、自分がアイデアを練るときに、いくらかでも参考になるからです。
そうやってひとつでも得るものがあれば、これは、もうけもの。930円の文庫代など、少しも惜しくありませんね。

……ま、いつもそううまくいけば、苦労はしないんですが。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
「TWISTED」の第2弾ですね。この間本屋で見かけて、おおっとうれしくなりました。前作はそのタイトルどおりの短編がそろっていましたが、第2弾も必読ですね。ああ、でもまだ007もバーニング・ワイヤーも読んでいない…あ、ロードサイド・クロスも…
若月
2013/09/09 20:17
はい、前作にひけをとらないラインアップだと思います。私が先を読み切れたのは、巻頭作のみでした。いちばん易しいのをイントロに配してあるようです。でもそのあとは、ことごとくおどろかされるばかり。
いや、このところ読書量が減ったせいか、私も未読のディーヴァーが溜まりだしています。ライムものはともかく、ダンスものは特に…。なんとか生活の無駄な時間を整理して読書に振り当てなくてはなりませんね。
戸松淳矩
2013/09/10 07:21

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