(元)ミステリー作家T・A  あさっての日記

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zoom RSS 老いゆく愛犬と過ごした夏

<<   作成日時 : 2013/08/27 00:23   >>

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身辺雑記です。ミステリーとか小説の話題は出て来ません(たぶん)。
今年の夏は旅行どころか、4、5時間の外出もままならぬ日々を送っています。
朝から晩まで、ひたすら仕事に熱中…というのならいいんですけれど、じつは愛犬の介護に忙しいため。

私の愛犬は今年で16歳になります。5月生まれなので、16歳と3ヶ月になったところ。人間なら80代のおじいさんですね。
山梨県原産の「甲斐犬」という種類で、日本犬にはめずらしく、全身が黒毛で、胴体には茶色の虎毛が入っています。標準は♂で14キロから15キロの中型犬ですが、うちのはやや大きくて、元気な頃は16キロから17キロくらいありました。
名前は「タロウ」。呼び名は「タロ」か「タックン」です。血統書名は「胆力虎」という、たいそういかめしいものですが、愛くるしい性格をしています。

このタロウくん、子犬の頃から、とても元気で、明朗闊達なやつでした。
というのも、うちへ来た経緯が、ちょっと変わっていまして、今を去ること16年前の春に、私の家では「クマ」という甲斐犬の子犬を飼った。タロウと同じ年ですが、2月生まれです。
この子もとても利発でかわいいやつでしたが、4ヶ月を過ぎた7月、突然の心臓病でなくなってしまいました。
あまりに寂しくてならないので、クマを買った犬屋さんに相談すると、ブリーダーのところに、クマのお姉さんが5月に産んだ子がいるからそれをもらってきましょう、ということになりました。

つまりタロウくんはクマちゃんの甥っ子なのです。「6匹のきょうだいのなかで、とびきり元気なのを選びました」と犬屋さん。
その言葉通り、病気ひとつせずにすくすく大きく育ち、運動神経の良さは惚れ惚れするほど。
もともと甲斐犬は山梨県から長野県あたりの山に住んでいた狩猟犬で、イノシシ狩りやクマ狩りに使われていたそうです。そのせいか、足腰のバネが強く、俊敏で、野球でたとえれば、好守好打の俊足タイプ。
元気盛りには、飼い主の手を放れてきた大型犬2匹と大立ち回りを繰り広げて、みごと撃退した武勇伝もあります。
おしりに噛みついたタロウを引きずったまま逃げていく相手の犬と、利かん気むきだしの顔で噛みついているタロウの顔は、未だに忘れられません。

そんなタロウが急に老いを見せたのは、今年の3月末のこと。
振り返ってみると、1年ほど前から、散歩の距離がだんだん短くなってはいました。
よその雄犬に吠えられても無視していることが多くなったし、臭いをかいだり、マーキングすることにも興味が薄くなっていたので、縄張り意識がなくなってきたのかな、と思っていました。
去年の夏には、体調を崩して、食欲がなくなった時期もありました。肉でスープを作って飲ませたり、犬用のおじやを作ったりしているうち、徐々に回復。でも1キロほど痩せてしまい、なかなか元に戻れません。
さすがのタロウもやはり年には勝てないのか、と寂しく思ったものです。

それでも今年の3月の末までは、家族が出かけるとき、二階のベランダから吠えながら見送り、帰ってくると、耳を伏せて、体を丸めて飛びついてくる、いつも通りのタックンでした。
ところが、だんだん感情表現が乏しくなり、家族が帰ってきても、ゆっくりシッポを振って出迎えるだけになり、そのうち、それもしなくなりました。
いつも頭を低く垂れて、ぼんやりした顔で、食欲だけはある。ベランダに出すと、いつまででも、ゆっくりゆっくり往復運動を続けています。室内ではぐるぐる旋回運動。狭いところに入り込んで、じっとしています。
まぎれもなく、犬の痴呆症状が現れてきたのです。

この頃から下痢が続いて、私の部屋は4回の「被曝」がありました。一度などは、積み重ねた本の脇に爆撃され、修復不能な本を何冊か捨てる羽目にも……。
かかりつけの動物病院に連れて行って、受け持ちの女医さんに診てもらうと、痴呆プラス貧血、胆管炎、腸内細菌アンバランスと診断されましたが、いちばんの問題は、首に出来た腫瘍で、唾液腺の一部にがん細胞があるらしいとのこと。

これが4月のことで、以来、毎月たくさんの薬を飲ませ、検査をしてきました。
おかげでおなかは治り、途中で罹った膀胱炎もすぐ治り、ほかもまずまずを維持できていたのですが、喉の腫瘍は大きくなるばかり。
高度医療センターでの手術という選択肢も提示されましたが、16才を超えている高齢、手術そのもののリスク、かりに成功したとしても、そのあと予想される感染症や後遺症のリスクを考えると、踏み切る気にはなれませんでした。
よけいなことをして、かえって苦しめた末に死なせるよりは、現状をできるだけ維持して、寿命に任せようと思ったからです。

6月にはまだ短い時間ですが、子犬の頃から通い慣れた公園に散歩に行っていました。幼なじみの友達も大方は亡くなったり、老いたりで、公園で会えるのは2匹だけになってしまいましたが…。
7月には、散歩は無理になりましたが、ベランダを歩いたり、庭をぐるぐる歩いたりはできました。
8月に入ると、庭を歩くこともしなくなり、寝部屋にしている部屋でほとんど寝て過ごしています。
それも、週を追ってできていたことができなくなります。
今では、ひとりで立ち上がることができません。立っても、支えてやらないと、すぐに脚がもつれて転んでしまいます。そんな姿を見ると、あんなに元気だったのに、と涙がにじんでくることもしばしばです。

そして先週は食べたものを喉につまらせて、30分も苦しみ、翌日からは流動食。腫瘍が食道と気道を圧迫しているからです。
最近は、ちょっと動くだけでも息切れし、そろそろ酸素ハウスをレンタルしなくてはならないな、と家人と話し合ったりしています。
全盛期には18キロまで大きくなったこともあるのに、今は13キロを維持できなくなりました。

おそらく、この夏はなんとか乗り切っても、秋が深まるまでの命はないでしょう。今はただ、苦しみがなく、安らかに旅立ってくれることを祈るばかりです。
それでも、まだ、針のない注射器に入れた流動食を口元に持って行くと、舌を出してくるのを見ると「ああ、タロウはまだ生きようとしているんだ。こちらが先に諦めてはいけない」と逆に励まされる思いがします。

流動食は缶詰のフードをすり鉢ですり、裏漉しにかけて、とろとろのスープ状、もしくはゆるいペースト状にします。朝晩、すりこぎを回しながら、元気だった頃のことをついいろいろ思い出してしまうのですが、犬はいくつになっても心が幼児のままですから、いくら年を取ったから仕方ないと頭ではわかっていても、かわいそうでなりません。

――動物を飼っていない人には「なんだ、犬の話か。たかが犬のことくらいで」と思われるかも知れませんね。友人のなかにも、動物を育てたことのないためか、この話をしても、さっぱり無関心の人もいます。まあ、人は体験していないことはなかなか共感できないものですから、仕方のないことです。
でも、犬を飼っている旧友からは、ほんとに心にしみいる温かい言葉をたくさん戴きました。
人間に苦しみや悲しみに立ち向かう力をくれるのは、共感してくれる人の言葉の力。
そんなことをしみじみ感じます。

さて、余談ですが、上の方で出て来た、かかりつけの動物病院ですが、ここには院長のほか3人の男性獣医師、3人の女性獣医師、同じく3人の動物看護師さんがいます。
私のタロウくんの担当はまだ若い女医さんですが、この先生には、じつは去年刊行の『うそつき』のなかでモデルをつとめて戴きました。
『うそつき』の303ページから305ページにかけて登場する女性獣医師がそれです。
もちろん、お名前は変えてありますが、イメージはだいたいこの通りです。
『うそつき』をお手元にお持ちの方は、ちょっと確かめて戴けるとおもしろいかもしれません。

…と、まあ、こんなときでも自作のコマーシャルをしてしまうのは、売れない小説家の性でしょうか。
そんなアホな主人とも知らず(いや知ってたかもしれませんが)16年もこのうえなく仲良くしてくれた相棒は、今も隣の部屋で静かな静かな寝息を立てています。
願わくば、彼の命が一日も長くこの世にとどまってくれますように。
そして眠っているあいだに、大きなやわらかな腕でそっと抱きかかえられてゆくような、平和な終わりを迎えられますように。



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内 容 ニックネーム/日時
うちは今月の始めに飼っていた犬が死にました。
捨てられていた子犬を拾って10年育ててきて、あと5年は生きてくれるかなと思っていたのですが、ある朝近所の人が散歩させていた大型犬に脅かされてショック死(?)してしまいました。
はっきりとした状況は判らないのですが、どうもその人が散歩中にリードを外しちゃったみたいなんですよね。それで大型犬が犬小屋の前まで入ってきて激しく吠えついたようなんです。私はその声で目が覚めました。
見つけた時はだらんと地面に伸びていて呼び掛けても殆ど反応せず、程なく逝ってしまいました。外傷も出血もなかったので噛まれてはいないようでしたが、さぞかしびっくりしたんでしょうね。
私は正直あまり熱心に世話をしていた訳ではないんですが、やはりいなくなると寂しいものですね。

ちなみに近所の人は翌日謝りに来られました。
石ころ
2013/08/30 18:42
えっ、そんなことってあるんですか!?
人間でも極度に興奮したりすると突然死する人がありますが、そういうことなんでしょうか。それにしてもよほど怖かったか緊張したんでしょう。かわいそうに。
その近所の人は謝りに来たくらいでは済まされませんよ。
もし石ころさんがことを荒立ててもいい、と決めたら裁判沙汰にされても文句は言えませんよ。
私も大型犬を飼う人には、かねてから強く言いたいことがあります。大型犬は制御されなければ猛獣になりかねません。人を殺す力を持っています。きちんとしつけ、常に制御できる態勢を取らねばなりません。その自信も覚悟もなく、大型犬は飼うな、と言いたいですね。
というのも、ウチのタロウも元気な頃ですが、四度くらい、放れてきた大型犬に襲われたことがあるからです。あれはほんとに緊張しました。
さいわいウチのは中型犬としては大きめだし、ケンカが強かったので事なきを得ましたが、同じ公園で小型犬が噛み殺された事故がありました。ほんとに腹立たしく思っています。
つい興奮して、自分の思いばかり述べ立ててしまいました。

それはお寂しいでしょう。あまりお世話していたわけではないと言っても、生活の中に溶け込んでいた家族の一員ですから、いろいろ思い出もあるでしょうね。いなくなられたら、自分の一部を持って行かれたような気持ちになると思います。

私もこのところ、不眠気味とストレスで、こないだは動物病院で血圧が急低下して短い間でしたが、失神してしまいました。
付き添いで行った飼い主が獣医さんに応急処置して貰うなんて、コントみたいですよね。
戸松淳矩
2013/08/30 22:02

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