(元)ミステリー作家T・A  あさっての日記

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zoom RSS 新作(第3長編)を書きながら想うこと

<<   作成日時 : 2013/06/04 11:22   >>

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いま書いている原稿は、無事に刊行されると、私の3番目の長編ということになります。
第1長編が2004年の『剣と薔薇の夏』、第2が昨年の『うそつき』、そして今度の新作というわけですね。
ただし、以前にジュヴナイルを3冊(いずれも創元推理文庫)書いていますので、これを入れると著作としては6冊めになります。

じつは、もうひとつ、ゲラまで組み上がっているのにペンディングしている長編があります。前にうるさく宣伝していた2200枚の大長編。
あれはどうなった、とときどきお尋ねを受けますが、まだ冷凍中で、しばらく解凍するつもりはありません。いま書いている作品の次まではもう予定がありますので、たぶんその次になるのではないかと思います。

冷凍している理由は、ゲラ読みの段階でいくつかの批判と注文がついたので、手直しが必要なため。それと、読み返すうち、自分でも、この物語はもっといい構成の仕方がある、と考えついたからです。その手直しがけっこう手がかかりそうなので、取りかかるには時間的な余裕がいるわけですな。

というわけで、大長編は後回しにして、第3作を進めているわけですが、スタートしたのは、去年の11月頃でした。そんならもうだいぶ出来ただろう、と思われるでしょうが、じつは私、2月から5月上旬まで、別の仕事(小説とは関係のないもの)にかかりきりになっておりました。
そんな次第で、新作原稿を途中まで書いて中断していたわけですね。

で、5月半ばからふたたび着手して、いま、書きかけ原稿の読み返しとチェックを終えたところです。
ざっと3分の1くらい出来ているので、順調にいけば8月から9月には完成できる予定です。
ですから刊行は半年先として、来年の3月ごろでしょうか。

タイトルはもう腹案がありますが、まだ編集担当者と打ち合わせしていないので、ここでは控えさせて頂きます。
お話はというと、純本格ではなく、サスペンス寄り本格風味のコンゲームもの、といった感じ。

鎌倉山のとある豪邸に住む資産家の女系一家。そこへ女主人の亡くなった姉の一人息子が、ニューヨークからやってくる。第一部はこの女主人の甥っ子が視点人物となり、このお屋敷に起こりつつあるいろいろな不審な出来事が述べられます。
鎌倉山というのは、鎌倉市の西のハズレにある高台で、むかしはお金持ちの保養地だったところ。
『うそつき』が鎌倉市内を舞台にしていたので、いくらか縁がありますが、内容的にはまったく別の物語。
さていっぽう、女主人の娘が書庫から見つけ出した、祖父が書いたらしい不可解な文書をめぐり、いろいろ不可解な出来事が起こります…。
甥っ子がこの文書を読んでいくと、内容は日本の敗色濃い戦争中の、大学のお話らしい。その内容がスパイ小説のような展開になっていて…。

というようなお話です。
これだけじゃ雰囲気は伝わらないと思いますが、まあ内容はおいおいお知らせするとして、表向き見えるものとは違う真相にどれだけ読者をアッと言わせられるか、本作はそのあたりがキモになりますね。なんとか、満足のいく仕上がりになればいいなと考えています。
まずは編集担当者が初校を読んで、どれくらい「あっ」と思ってくれるか。そこが第1の山。

と言いつつ、じつは決まっているのは大筋だけで、これからどう出来上がるのか、自分でもまだわからないんですけどね。そこらへんが創作のおもしろさ、小説を書く楽しみでもあります。
書いているうちにペンが思わぬ方向に走り、登場人物が予定外のことを言い出し、想定外のキャラが現れ、なんだかわからないけれど、こっちの方へ行くとおもしろそうだ…と引きずられていくと、最初に構想していたのとはだいぶ違う物語になっている。
それがうまくいっていれば、まるで「小説の精霊が舞い降りた」ような快感に浸れますが、もちろん、いつもうまくいくわけではない。翌日読み返すと、ただのアホな思いつきだった、なんてことがよくあります。

たぶん、そういうときは脳内にドーパミンみたいな快感物質が分泌しているんでしょうね。一種の興奮状態でハイになっている。
小説の世界に踏み込むと、なかなかやめられないというのは、こういう体験がたまにあるからではないか、と個人的には思います。
たとえていうと、数学の難問をうんうん苦しみながら解いていて、「あっ、こうやれば解けるんじゃないか」とひらめきが走る一瞬。あるいは、山の中で道に迷って弱っているとき、「この道を抜ければ、本道に出るんじゃないか」という小道が、葉むらの向こうにちらりと見えた瞬間。

まあ、それが楽しいからやっていけるんでしょうねえ。
それ以上に、うまく書けなくて苦しんだり、いいアイデアが出て来なくて情けない思いをしたり…の方が多いわけですから。
それでも、街の小さなパン屋さんが「おたくのパンが好きだから」と買いに来てくれるお客さんに支えられているように、「おもしろかったですよ」と言ってくださる読者の方にひとりでも多くお会いしたくて、今日もしこしことペンを進める(ボードを叩く)…。

自分が「プロの作家」だなどとは、小指の先ほども思ってませんが、小説書きを仕事にしている人は、多かれ少なかれこんな心境なのじゃないかなあと思います。わかりませんけど。


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内 容 ニックネーム/日時
 どの記事も大変勉強になると、熱心に読んでおります。
ミステリを読んでいていつも思うのは、どこから、この素材を得たか、アイデアを思いついたのだろうか、構成をどのように組み立てるのかということです。
 戸松さん(先生というべきでしょうが)は、構成を立てる上で、アウトラインプロセッサーみたいなものは使用していますか。
 箱書きみたいなものは作っいるのでしょうか。この間、NHKの番組で今度清張賞をもらった女性の方が、テレビドラマのプロットライターをやっていた(こんな職業があるというのが驚きでした)といって、月に300枚のものを3作も書いていたと言っていました。
 昔、NHKの番組で、吉行淳之介が、プロットなのでしょうか、ノートに線を延ばして、構成を立てているものを観たことがあります。清張の対談では、三島由紀夫の創作ノート(下書き)は、そのまま本文になっている。と、いうのを読んだことがあります。
 また、現在では主に時代小説を書いている作家のHPでは、マック系のアウトラインプロセッサーを使っているというのを読んだことがあります。
 そのうち、応募できればよいと思いながら、ミステリを書いてはいます。
 現在は、プリント用紙の裏側や、ノートに思いついたことを書いて、構成もどきの作っております。
 なにか、ありましたら教えてください。
眠り兎
2013/07/05 15:06
コメントありがとうございます。
私は「先生」と言われるほどエラい物書きではありませんし、そう呼ばれることがあまり好きではないので、どうぞ「さん」付けでお願い致します。
さて、プロットの立て方ですが、これは人それぞれですね。
私の場合は、アウトラインは使いません。あれは最初からきっちりと構想を立てるタイプの作家向けで、私は本文でも書いたように、かなりアバウト派です。
もちろん大筋は作りますが、ノート5ページくらいに空間をあけて、章ごとにざっとあらすじを書いておき、あとから隙間に思いついたことを埋めていきます。
箱書きもきちんとは作らず、新しい章に入るときに、登場人物の動き、できごとの流れ、不可欠なせりふをメモする程度です。
細部は書いていくなかで詰めていきます。
書き終えた章については、内容の概略、枚数などをノートにつけます。
最初に作った箱書きとは違ってくることもしばしばです。

人によってやり方はさまざまなので、有名作家の書いた創作手引きを読んだり、創作ノートを見たりして、ご自分の好みに近いものをヒントにしてはいかがでしょうか。

アイデアを得る方法は正直なところ、こうすればよい、というものがあるかどうかわかりません。綾辻さんや法月さんにはうかがったことがありますが、「突然ひらめいた」としか言いようがないような感じでした。
ただ言えることは、お二人ともつねにアイデアを頭のどこかで考え、思いついた小さなタネはあれこれと転がしてみて、もっと良くならないか工夫するようです。
この「つねに考えている」ことが、何か刺激を受けたとき、アイデアに飛躍するのではないでしょうか。
私ではあまり大したことも言えませんが、何かお尋ねになりたいことなどありましたら、今後ともどうぞご遠慮なくコメントください。私にとっても、方法論を考え直すよいきっかけになりますので。
戸松淳矩
2013/07/05 22:43

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