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読みました。なにかと評判の「私の男」。読み終わった直後の感想をひとことで言うと、「ううう…気持ちわりぃ〜」 児童ポルノ規制法を論じたとき、人間なんて生物としてはみんな変態なんだから、変態を根絶しようという思想は間違ってる…と気炎を上げたんですが、リアル親子相姦は気持ちわるいです、やっぱり。いや、リアルじゃなくてフィクションなんだけど。 けなしてみる、とタイトルに掲げたものの、作品としての印象はけしてわるくありません。直木賞に相当するレベルにきっちり仕上げていると思います。 でも、せっかくなので、まず「けなす」ほうからやってみましょう。あ、ついでながら、作品の内容に触れているところが多々ありますので、これから読もうという方は、お気をつけください。というか、以下は読まないほうがよろしいかと。 まず、これは直木賞の選評で渡辺淳一さんが指摘した点ですが、リアリズム小説としてみると、おかしなところが多いということ。 主人公とその父親は、北海道で人を殺して東京に逃げ、そこへ過去の事件を追っている刑事が訪ねてくる。父親はこの刑事を殺してしまいますが、なんとその死体をアパートの押し入れに隠しているんですね。ビニール袋で包んでいたということらしいのですが、これはいくらなんでも無理やりでしょう。そんなことしたら腐敗臭が漏れて、すぐに近所の人に気づかれてしまいますよ。人体の死臭はものすごいですから、こんなもんではとても防げません。 それに、押し入れに死体を放置したまま、ふつうの人間が暮らしていけるものでしょうか。まあ、ふつうじゃないのだと言ってしまえばそれまでですが。 ミステリータッチを援用しながら、なぜこんなアバウトな設定にしてあるのか、途中まで読んだ時点では、ちょっと理解できませんでした。 それから最初の殺人で、主人公が近親相姦を知ってしまった老人を、流氷に乗せて死なせてしまう。ところが老人はカメラを持っていて、その前後の情景を(主人公の姿も含めて)撮影している。で、そのカメラは遺体といっしょに見つかっています。それなのに、警察はすぐに現像しようとしないんですよね。他殺が疑われる事件で、被害者の所持品もあったのに、警察が証拠調べをしないなんて、そんな馬鹿な話はありえない。 おまけにそのカメラを、刑事が主人公の家へ持ってきてしまうというのだから、あまりのルーズさにびっくりします。いかに不祥事が多いとはいえ、とても日本の警察の話だとは思えない。 それに北海道の刑事が東京に行って行方知れずになったというのに、警察が追跡して来ないのもおかしいでしょう。 こう並べてみると、渡辺さんが「ファンタジーにするならともかく」といった趣旨で批判されたのも、ある意味では当たっています。 しかし、それじゃ、このお話をきちんとしたリアルタッチで描いたらどうなるか。…リアルに書かれた、殺人者親子の近親相姦物語。読まないうちから気が滅入りそうですね。 つまり渡辺さんのような批判をかわすには、道が2つある。リアルなドロドロした、寒々しい物語を精密に書き切るのがひとつ。もうひとつは、もっとファンタジーにしてしまう手法です。 けれども、作者の狙いはそのどちらでもなかったんだろうと、私には思えます。完全なファンタジーにしてしまうと、殺人とか近親相姦とかの衝撃力が薄れてしまうし、男と女、親と子という作品の骨格となるテーマの現代性が失われる。そうかといって、完全にリアルタッチで描き切るのは、この文体では無理でしょうね。 この文体は「桜庭調」と言うべき独特の空気感を持っています。これはファンタジーでもなくリアリズムでもない、まさに桜庭一樹の世界を描くためのもの。桜庭さんお得意のマジックリアリズムだと言ってしまえば簡単ですが、そうとも言い切れないところもあります。そこがこの作品の弱さなのか、新しさなのかは、ひとによって解釈が分かれるところだと思います。 北方謙三さんでしたか、「弱点はいろいろあるが、小説としての力を買った」というような発言がありましたが、判断はむずかしいけれども、とにかく訴えかけてくるパワーはまちがいなくある。そこが受賞のポイントだったのでしょう。 テクニック的にはなかなか工夫されています。章立てが現在から始まって、だんだん過去にさかのぼる手法ですが、『夜愁』でウォーターズもこれを使いましたね。それがこの題材だと、ぴたりと決まっています。この物語をもし時系列に沿って展開したとしたら、価値は半減したかもしれない。過去がだんだん明らかになってくるにつれて、主人公親子の抱えている問題が少しずつかたちを成してくる。親子であって親子でない、男女であって男女でもない、という特殊な二人の関係が浮かび上がってくるところは、みごとなものだと思いました。その意味で、構成的にはミステリーといってもおかしくない。 ただ注文をつけると、きわめて特殊な親子関係だけに、この物語が普遍的な親子、男女の問題までを照射しているか、というと、やや疑問が残ります。テーマを掘り下げるためには、サイドから別の光を当てるという構成があってもよかったのではないか。一部その片鱗かと思われる要素があったのですが、作者はそのラインを発展させるつもりはなかったようです。それよりも物語としての凝縮度を優先させたということでしょうか。 |
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わたしは未読なので『以下は読まないほうが・・・』 |
いち 2008/04/25 00:38 |
ご明察のとおりで、欠点と思われる箇所を挙げながらも、結論としてはそれは欠点とは言えないのかも…という論になりました。 |
戸松淳矩 2008/04/25 11:33 |
赤朽葉で止めておいて正解だったか…… |
石ころ 2008/04/25 12:26 |
純粋にミステリーとして読めば、がっかりするかもしれません。本文に書いたとおり穴だらけだから。 |
戸松淳矩 2008/04/27 14:11 |
「私の男」読了致しました |
いち 2008/05/07 00:55 |
唾液ね…たしかにあのシーンはグロですね。読みながら「げっ、気持ちわるッ」とか叫んでしまいましたよ(笑) |
戸松淳矩 2008/05/07 17:40 |
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