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おもしろナースの慶應大学病院編です。こちらにも、なかなかおもしろいナースさんたちがいらっしゃいました。ほんとうは3人ほどご紹介したいのですが、あまり長くなっても大変なので、代表としてKさんという、まだ若い看護師さんのお話をしてみたいと思います。というのも、この人が、かなり笑わせてくれるユーモリストで… 12月に内分泌内科に入院して2週間の検査を受けたことは、このブログでもご報告したとおりです。このとき3回ほど担当になってもらったのがKさん。最初は入院して3日ばかり経ったころでしょうか。私が10月に榊原記念病院で心臓手術をしていることはもちろんわかっているので、はじめはごくまじめに、その後の経過について質問していたKさん、ひと区切りついたところで、 「でも榊原病院って、いい病院なんですよねぇ。いろいろ噂には聞いてますけどぉ」 と、にわかにくだけた口調になりました。そこで、私も 「いい病院ですよ。広いしきれいだし、それに看護師さんも美人が多いしね」 と調子を合わせます。 「へー、美人が多いんですかァ。ふーん」 Kさん、いたく興味を持ったご様子です。 「きれいな人、何人くらいいましたぁ?」 「そうだなあ。4人か5人はいたんじゃないかなあ」 そんなにですかぁ、と目を見張ったKさんは、急にその目を輝かせると、 「ねぇねぇ、じゃあ、ここの病院ではどうですか? 美人は何人くらいいます?」 「うーん。そうだなあ」 この病棟にもきれいな看護師さんはわりと多いので、私は頭のなかで指折り数えてみました。Sさん、Mさんあたりはだれが見ても美人だろうし、I さんもなかなか色っぽい。あれは男好きするタイプだよね…とカウントして、 「…まあ3人は確実かな」 するとKさん、3人かあ、としばし考え込んだあと、大まじめに 「けど、あとの2人って誰だろう…?」 …Kさん、ひとりめは自分だと確信しているんですね。いえ、Kさんはいわゆる整った美人顔ではないけれど、とってもキュートな可愛いタイプですよ。ただ私の年齢からみると、若すぎるんだなぁ。女子高生とは言わないが、女子大の下級生を相手にしてるみたいな気がする。でも、こういう愉快な自惚れ(うぬぼれ)は大好きです。相手を明るい気持ちにしてくれます。 ある日の夕方、ロビーを歩き回っていたら、時間外通用口のところで帰りがけのKさんと出会った。なんだか、おめかししているみたいなので、 「おや。今夜はこのあとデートか何かですか」と尋ねると、 「違いますよ−。高校のときの友達と食事会があるんです」とニコニコしています。楽しそうでいいなあ、と思っていたら、 「あ、そうそう」と急にうれしそうな顔になった。 「その友達のひとりもナースやってるんですけど、その子のお勤めしてる病院でおもしろいことがあったんですって。聞きたいですか、これ?」 そう言ってるご当人が聞かせたくてたまらないって顔をしています。きっと、 おもしろい話を仕入れると、人にしゃべりたくって仕方がないタイプなんでしょうね。つい、こちらもニコニコしてしまう。 「あのね、その子、内科の外来にいるんですけど、受け持ちの患者さんにスチュワーデスさんがいるんです。それでそのスチュワーデスさんと仲良くなったみたいなんですよ」 …いやはや、ナースにスッチーですか。男性のあこがれる女性の職業、トップ2ですな。 「そのスチュワーデスさんがね、待合室に座っていたら、隣の席の人が突然、気分がわるくなって倒れちゃったんですって」 そこも大きい病院なので、内科外来といってもいくつものセクションに分かれていて、診察室が10いくつあります。待合室も当然、広い。いきなり隣の人が意識を失ったものだから、スッチーの彼女もびっくりした。しかしそこはさすがスッチー、すっくと立ち上がると、あたりに響き渡る声でこう叫んだ。 「お客さまのなかにお医者さまはいらっしゃいませんか? ドクターはいらっしゃいませんか」 とたんに、あちこちの診察室からドクターがぞろぞろと現れたそうです。 …そりゃそうだよね、だって病院なんだもの。 あとでスッチーの彼女がいうには、とっさのことで自分が病院にいることを忘れていたんだそうです。それでつい、日ごろの職業的なリアクションをしてしまった…それにしても、病院の待合室で「お医者さまはいらっしゃいませんか」は、かなりウケますね。 あるとき私がベッドの上にパソコンを載せて仕事をしていると、Kさんが顔を出しました。ほかの看護師さんはベッドで原稿を書いていても、そこはおとなですから、大人の対応をしてくれます。つまり「何を書いているのか」などと詮索せずに放っておいてくれる。 ところがKさんは違うんですよ。最初は黙っていましたが、じきに興味津々を顔いっぱいに表して、 「ねぇ、なに書いてるんですかぁ? 見せてくださーい」 と今にものぞき込もうとする。 「だめ、だめ。ひとに見せるようなものじゃないから」 じつはひとに見せるものを書いてるわけなんだが、小説の文章は書きかけでは他人に読まれたくない。すげなく断ると、 「ふうん。何だろうなあ。日記とか? 告白?」 「なんだよ告白って。こんなところで何を告白するっていうの」 「私への愛の告白とか」 「あー、それはないな。もうそんな元気はありません」 「そうかぁ。じゃあ遺書とか」 「…い、遺書って。…それ、シャレにならないでしょ、病院じゃ」 とお馬鹿なやりとりをしながら、床頭台にしまった書類を探していたのですが、ふと振り返ると、なんとKさんが首を伸ばして画面を読んでいる。 「ちょっと。だめだってば。それ、まだ完成してないんだから」 制止にもかかわらず、画面1ページ分、すっかり読み切っちゃったKさん、真顔でこうおっしゃった。 「…けっこう、うまいじゃん、これ。えっ、もしかして自分で書いたんですか」 そりゃそうですよ。自分で書かないでどうしますか。 するとKさん、感心のていで(?)こうご託宣をくださった。 「もっと練習したら、作家さんになれるんじゃないの?」 ……もっと練習したら、ですか。むむむ。…なんか、褒められてるような、そうではないような。 じゃ、またあとでおうかがいしまぁす、と足取りも軽やかに出て行くKさんを見送りながら、 「退院したら、もっと練習しなくっちゃな」 と深く心に刻む私めでありました。 |
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| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
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| 内 容 | ニックネーム/日時 |
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ちょっと入院して来ます |
石ころ 2008/04/14 19:27 |
えーと、ちらっとどこかで書きましたが、入院中に見るナースは2割ほど美しく見えるそうです。そのへん、頭に入れといて…ください。 |
戸松淳矩 2008/04/15 15:56 |
2割ほど美しく・・・ですか |
いち 2008/04/15 23:28 |
いえいえ、そんなご謙遜を。 |
戸松淳矩 2008/04/16 15:08 |
書き忘れました。そうです、Kさんに読まれたのは新作の後半の1ページでした。本ができあがったら、送って差し上げようかな…と思っています。びっくりするかな。 |
戸松淳矩 2008/04/16 15:12 |
>本ができあがったら、送って差し上げようかな |
藤岡真 2008/04/16 16:56 |
けっこう悪戯やってますねー、藤岡先生。松本清張はむかし職場で虐められた相手を犯人や被害者として登場させたそうですけど。 |
戸松淳矩 2008/04/17 02:36 |
作家さんってお茶目ですね |
いち 2008/04/18 16:09 |
お茶目なのか、ひとが悪いのか、微妙なところかもしれませんよ。私の場合はお茶目でしょうが、藤…あ、いえ、なんでもありません。 |
戸松淳矩 2008/04/19 12:30 |
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