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前段は一般的によく言われている反対論をダイジェストしてみました。で、後段になるわけですが、先に印象批評的なことを言っておくと、こういう規制をやたらにしたがる人々というのは、人間をすごく単純にとらえているのではないか、と思います。Aという情報をインプットすると、必ずBという行動が現れる、みたいな。 マスコミもそうですね。なにか事件があると、すぐに「容疑者はこれこれのマンガやゲームを大量に持っていた」といった報道をする。無差別殺人犯が『デスノート』を好んで読んでいた…なんて言われたって返答に困りますよ。あれが危険だというなら、すぐに発禁にした方がいい小説が山ほどありますから。いまの児童ポルノ規制論は、これとよく似ている。 だいたい人間のセックスは動物のそれとはまったく質が違っています。動物は本能だけで行うわけで、目的はあくまで生殖です。もちろん人間だって生殖のために性行為を営むことはありますが、ふつう、それだけが目的ということはない。セックスするとき「さあ、今から生殖するぞ」と思ってする人はあまりいないでしょうし、それどころか避妊法の研究は古代から営々と続けられてきています。 だいたい発情期が定まっておらず、いつでもセックスできるということからして、人間は動物としての正常な在り方から逸脱している。人間と動物の生理的ないちばんの違いは、神経系が異常に発達してしまったことでしょう。神経はなんのためにあるかというと、情報伝達です。必要な情報をすばやく全身に伝えるために神経はできた。 単細胞生物なんかだと、循環器も呼吸器もありませんよね。だんだん高等化、複雑化するにつれて、伝達機関が発達してきて、やがてホルモンとか神経とか、情報伝達のための手段が発達してきた。 ところがそこが問題なわけで、人間は大脳が発達しすぎて、脳神経も異常に発達してしまった。過剰適応というやつですね。恐竜が不必要なほど巨大化したのと、よく似ています。恐竜が全身で巨大化したところを、人間は脳内だけで巨大化した。 だからこそ繊細な感情も生まれ、知性が発達し、文明文化も生まれた。けれど、生物としてはこれはよけいなことだったのかもしれません。なぜなら、単純であるべき生殖、つまり性行為までが、否応なく文化に組み込まれてしまったから。 生殖という観点からみたら、人間のセックスなんか、矛盾だらけでしょう。だいいち性行為が可能になるまで、生まれたあと13年から15年もかかる。こんなのろまな動物はいません。しかも育児は社会的行為でもあるから、セックスが可能になったからと言って、かるがるしく妊娠出産はできない。自活できるようになるまで、つまりふつうは20歳すぎまで、避妊せざるをえない。なんという性的エネルギーの無駄遣いでしょうか。 おまけに同性愛なんてものもある。性同一性障害なんてものもあります。これも動物にはない。いや、猿には同性愛があるらしいという研究もあるそうですが、人間とは量的レベルが違いすぎるでしょう。人間では、同性愛はギリシャ以来、文化になっているくらいですからね。まして性同一性障害に悩む猿だの犬だのなんてのは、まさかいないだろう。 生殖という観点からだけみれば、人間のセックスがいかに無駄だらけで、逸脱だらけかということの証拠ですね。 そればかりでなく、たとえば「変態」の一種としてフェティシズムがある。この嗜好をもつ人は、女性の身体そのものでなく、下着だとか靴下だとか、性的イメージをかきたてるモノに性欲をより刺激される。どこかの学校の教頭が、ロッカーに盗んだパンティを300枚も隠していた事件がありましたが、ああいうタイプです。 もちろんロリコンもたくさんいます。今回の規制案でびびっているのは、このロリコン趣味の方々でしょう。コスプレマニアなんてのもいる。ふつうの格好をした女性には燃えないけれど、制服をつけたりすると俄然、性的エネルギーが燃え上がる。女教師、婦人警官、ナース、尼さん、セーラー服女高生などが人気があるようですが、要するに性的イメージを拒否するものに、いっそう刺激されるというパターンです。 このバリエーションが近親相姦もののビデオやDVDの愛好者ですね。この人たちは、べつに自分が近親相姦の願望があるわけではない(例外はあるでしょうが)。じゃ、なんでそんな変態モノを好んで見るかというと、近親相姦が最大のタブーだからです。 仲の良い夫婦がセックスする、という設定のビデオなんか、見たってちっともおもしろくない。ところが、これが主婦の不倫モノとなると、ぐっと興がそそられます。普通の人はそのへんで満たされるのですが、より観念的に先鋭化しちゃった人は、もっと強いタブーを求める。で、近親相姦モノに走ってしまうらしい。 つまり人間は、観念でセックスしているということです。タブーを乗り越えるという観念が、興奮させる。 女性は男性に比べて「変態」が少ないと言われます。サドマゾくらいはいますが、全体としてみるとマトモな人が多い。これは女性のほうが生物的に安定しているからだと言われます。生物としてはメスが基本であって、オスというのはかなり無理をして作り出された存在らしい。その無理があるから女性より寿命も短いし、乳幼児時代の死亡率も高い。それだけ男性は神経の暴走も起こりやすいのかもしれません。 もっとも、女性はセックスにロマンチックなムードを求める人が多いようです。それだって、やはりイメージとか観念とかで包み込まないと、満たされたセックスができないということでしょう。 あれこれ無駄話を並べましたが、つまり何が言いたいかというと、:濃淡はあれ、人間は誰しも本能だけでセックスはできないので、そこが動物との違いだということ。観念やイメージに頼らなければ性的に満たされない人間は、みんな動物としては「変態」だということ。これは私が独断で言っているわけでなく、岸田秀さんもバタイユもそんなふうに言っている。めんどうなので、いちいち引用はしませんが。 そして、ロリコンはもちろん、二次元ポルノもまた、その変態性のひとつの現れだということ。 ですから、これは禁圧したからといって、なくせるものでは絶対にありません。むしろ禁酒法時代のアメリカみたいに、抑圧された欲求が地下に潜って、ますます危険なものになりかねない。こういう人間の本質にかかわる部分を抑圧すれば世の中が「清潔」になる、と思うのは、性的に「正常な」人間によるファシズム、魔女狩りです。 これはもう、いくら気持ちわるいと思っても、なんとか社会全体で飼い慣らしていくしか、方法がないのです。 具体的には、まず現実の子供に害をなす行為については、厳罰化をすすめること。直接の性的虐待や、子供をだましたり脅したり、盗撮したり、お金で支配したりして性的な画像をつくることが、これに当たります。 そして社会政策的には、「変態の飼い慣らし」を社会システムに組み込むこと。現実の子供に害をなさないかぎり、あるいは害をなすことが証明されないかぎりは、それを個人的趣味として認めてやることです。 一般犯罪の抑止と同じで、適正な罰がなければ、世の中はアノミーになる。しかし罰だけではだめで、その罪が生じてくる原因を探ってケアしてやらないと、世間に対する怨念が蓄積される。 個人的な所持や、二次元ポルノを愛好すること、おとながセーラー服を着て演技することくらいは容認してやるべきでしょう。でないと、むしろ抑圧された性的少数者の怨念が、社会を破壊することになりかねない。私はそう思いますが、いかがでしょうか。 |
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仰る通りだと思います。なんでもかんでも法律で規制すれば良いというものではない。規制により抑えられた欲求が生身の児童に向けられて、却って逆効果になるのではないかと危惧します。 |
さくら 2008/04/06 18:28 |
イタリア映画の「スキャンダル」や「ヒッチハイク」を観て |
石ころ 2008/04/06 19:10 |
さくらさんへ |
戸松淳矩 2008/04/07 01:00 |
戸松さんやみなさんに賛成です。 |
いち 2008/04/08 01:02 |
私の知りうる限りでは、ほとんどみなさんがそうお考えのようです。規制を厳しくすべきだという意見の人はあまりいらっしゃらない。 |
戸松淳矩 2008/04/08 23:05 |
>仲の良い夫婦がセックスする、という設定のビデオなんか、見たってちっともおもしろくない。 |
藤岡真 2008/04/09 14:08 |
前稿でも書きましたが、私もべつに「変態もの」が好きなわけじゃありません。というか、この手のビデオを積極的に見ること自体があまりないのです。本文に書いたのは、一般的にはこうであろうかという半ば推測で、人の好みはさまざま、というのは当然のことです。その意味でSHINさんは「性的幻想」の逸脱度が少ない方なのでしょうね。そんな方ばかりなら、ポルノ規制なんて、そもそも問題にもならないのでしょうが…。 |
戸松淳矩 2008/04/10 09:24 |
あ、失礼しました。藤岡真さんでしたね、こちらでは。つい混同してしまいました、すみません。 |
戸松淳矩 2008/04/10 21:12 |
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