ミステリー作家戸松淳矩 あさっての日記

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help リーダーに追加 RSS 週刊文春ミステリー・ベストテン

<<   作成日時 : 2007/12/22 14:55   >>

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毎年恒例の週刊文春のベストテン、今年は慶応病院の売店で雑誌を買って読みました。
 いちおう推理作家協会に名を連ねているので、11月初め頃、文藝春秋から投票券と言うんですか、用紙が送られてきます。せっかくなので今年も投票したのですが、退院やら親父の葬儀やらまた入院やらと忙しくて、そのことはすっかり忘れてしまっていた。

 で、なにげなく買ったその号を読んでいたら、おしまいのほうにミステリーベストが載っている。「おお、今週号に載るんだったっけ」と思い出しましたが、なにしろ自分がどの作品に投票したのさえ定かではない。
 ほほう有栖川さんがトップなのか。ふむふむ外国ものは「ウォッチメーカー」であるか。と得心はしたものの、投票時点でどちらも読了していなかったから、自分が一票を投じていないのは間違いない。
 なんとなく投票したのを覚えているのは、宮部さんの「楽園」と吉田さんの「悪人」、あと桜庭さんの「赤朽葉…」くらい。海外物は「双生児」「大鴉…」「病める狐」とあと何だったっけ。

 パラパラと飛ばし読みしていると海外物7位の「夜愁」のところに、なんと私めのコメントが載っているではありませんか。へー、オレは「夜愁」にも投票していたのか…と、無責任な感想を抱きつつ我がコメントを読み返すと、
「章が進むごとに時代が遡る、意表を突く構成が成功している。正面からミステリを謳わないがミステリの王道を行く」
 などとアバウトなことを書きつけている。
 ミステリの王道ってなんだよ、こら。このギョーカイにはうるさ型がたくさんいるんだから、こんな雑なこと言ってると、たちまちツッコまれるぞ。

 …まあ、それはともかく、手元にあった「このミス」と「文春」とを読み比べていたら、あることに気がついた。つまりですね、国内物に限ると、文春のベストテン作品と「このミス」のそれとの間に、ほとんど違いがないんですな。
 文春の順位でベストテンに入った10作品のうち、8作品が「このミス」でもベストテン入りしているのですよ。残る2作品にしても、「このミス」での順位は16位と17位で、しっかりベスト20にランクインしている。

 要するに順位が入れ替わっているだけで、ベストに選ばれるような作品はほぼ同じなんですね。ふーむ。こいつは気がつかなかった。
 いったい、これは今年に限ったことなんでしょうか。それとも文春が投票方法を改めて以来、そういう傾向が出てきているのでせうか。どなたかお調べになった方がいらっしゃったら、そのあたり、ぜひご教示願いたいところです。

 文春ベストについては、正直言って、私はかつてはあまり信頼していなかった。というのも、毎年江戸川乱歩賞作品が上位に入るのがお定まりだったので、ここの投票者のなかにはあまりミステリーを読んでいない人もいるんじゃないか、それでとりあえず話題作に投票しているのではないか、と疑っていたのです。
 もちろん乱歩賞受賞作には、ベテラン作家顔負けの高いレベルを示す作品もあります。だけど毎年のようにそういう作品が出てくるかというと、それはないだろう、と首を捻らざるを得ない。
 ですから文春の投票システムが変わったことは歓迎しているのですが、その結果として「このミス」と中味が重複してしまっては、これはまたつまらない。
 
 ところが、では海外物は如何、とこちらを調べてみると、あら…意外。
 文春と「このミス」両方でベストテン入りした作品は3作品しかない。「このミス」20位まで広げると、さらに5作品が入りますが、そこにも入らないものが2作品ある。
 このくらいのズレがあると、ベストテンを眺める楽しみも出てきますね。欲を言えば、片方ではまったく無視されたような作品が、別のベストテンでランクインする…そんなケースがもっとあると、探して読んでみるかと読書欲がいっそう湧こうというものです。

 こうした現象(国内物では投票結果が近似し、海外物ではまずまず差異を示す)は何によるものか、いちおうの仮説はあるのですが、まあぶっちゃけたところ、よくわかりません。というか、そんなことはどうでもいい、と言えばどうでもいい話でもあるわけだし。

 そうは言いながら、私はこの2つのベストテンをわりと本選びの参考にしてもいます。必ずしも未読の上位作品を選ぶわけではないんですが、なにしろ出版される本は多いし、読書に割ける時間は限りがあるし、読むのが遅いし…というわけで、つまらん本を読むとすごく時間を損した気分になる。

 そんなことを友人と電話で話していたら、「文春ってさ、コメント載ると掲載料くれるんでしょ」と彼が言ったから、私は喜んだ。「えっ、ほんと?そんなん知らなかった」「ほんとだよ。投票依頼書に書いてあるじゃん」
 よく聞いたら掲載料といってもタクシー代くらいのものでしたが(だって3行コメントなんだし)、こういう予定外のおカネはたとえ幾らでも、ちょっとうれしいものです。ほら、上着のポケットに忘れていたお札が入っていたりすると、けっこう儲かったような気がするでしょ? あれと同じですよ。

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コメント(4件)

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早川もベスト本を出したりして一体どこのランキングが
一番信頼出来るのか迷っちゃいます。もっとも最終的には自分の目で
確かめるしかないのですが……。
石ころ
2007/12/22 15:22
そういえば早川もベスト本を始めたんでしたね。
そもそも違う感性、価値観を持つ個人の評価を総合して作るランキングに、どういう意味があるのか、という話にもなりますが…。
あくまで、ひとつの指標として利用すればいいんじゃないかと、思っています。好みの似ている書評家をみつけて、その人の作るベストから読んでみる、という手もありますよね。
戸松淳矩
2007/12/23 12:24
おかえりなさい。
お元気そうで何よりです。
私は一介の読者なので、読んでる本も
恐ろしく少ないですが(読むのが遅いし)
ミステリが大好きです。
ランキングなどに自分の読んだ本が入っていると
喜んでいる単純な読者です。
(読む本が少ないので、ランキングに入ってないことが多々あり)
タイトルが気に入っただけで買うことも多いです。
「今これが一番売れている話題作」なんて宣伝文句があると
「じゃあ、私が買わなくてもいいよね」なんて思ってしまいます。
へそ曲がりなんですね。
でも、話題作でも人気作家でも賞を取った作品でもなく
自分が選んで買った本が面白いと
これまた嬉しいのです(単純・・・)。
お体大切にお過ごしください。
いち
2007/12/25 01:19
ありがとうございます。体調は今のところ順調に回復しているようです。
ランキングの楽しみ方には、おっしゃるようなポイントもたしかにありますね。私も、自分が読んで気に入った本が入っていれば「ああ、やっぱりね。みんなわかってるんだ」とうれしいし、まったく無視されていたりすると「可哀想だネー、こんな良い本に気がつかないなんて」とひとり優越感?に浸ったりしています。
読み手として言うなら、ランキングはあくまで小道具。自分で選んだ本が読んでみたらおもしろかった、というのが読み手としての至福だと私も思います。
…とはいえ、書き手としてはランキングはやはり気になりますけど。
戸松淳矩
2007/12/26 12:03

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