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そのあと、島田さんのLA生活について伺いましたが、今のアメリカではカーとかクイーンとかの古典本格作品があまり読まれていないようだ、というお話がありました。向こうで知人の家を訪ねて、書斎を見せてもらうと、ミステリー読みの人でも古典の蔵書はあまり置いてないのだそうです。 「今でも本格の新作にこんなに熱心に取り組んでいるのは、たぶん日本くらいじゃないですか」 …さすがに本格の大御所だけあって、そうおっしゃる口吻にプライドがちらりと伺えました。たしかに、日本では新しい本格作品を開拓しようという作家もまだまだ多いし、ヴィンテージものの出版も相変わらずですからね。それを支える本格ファンの層が厚いということでしょう。 それから話は自然な展開で、綾辻さんたち新本格の作家の話題へと流れます。ところが、島田さんが講談社の宇山さんとともに、若い作家を世に押し出した経緯についてお訊ねしたところ、意外なお答えがありました。まだ未知数の新人を推すのは冒険でもあったのでは、という質問に返ってきたひと言が、これ。 「いや、でもほんとに、ぼくは何にもしてないんですよ。あれは、そうなるべくしてなったんです」 うーん。なんとまあ、奥床しいご発言。さすがシマソー、器量がでかいわ。これ、ウツワの小さい人だったら、かれらはみんなワシが育てたようなもんじゃ、とか、新本格ブームはワシが作ったんだぞよ、とか絶対言いますよ。 そんなことにまったく拘泥しないところに、島田さんの本格ミステリーへの深い愛情と情熱を感じましたね。じっさい、そういう方でないと、大きなお仕事はできないと思いますが。 そうそう、そのほかの作家のいろんなエピソードも伺いましたが、これはちょっと書いていいのかどうか、わからないなぁ。ま、みんな笑えるエビなんですけど。 たとえば島田さんが北方謙三さんとバーに行ったとき、お酒を飲みながらミステリー談義をしたんだそうです。この顔合わせでどんなお話が展開したのか、世の編集者なら「特別対談」と銘打ってページを組みたいマッチングでしょうね。ところがです。その話の間じゅう、北方さんときたら、隣にすわったホステスのおねえさんの…うーむ。やっぱ、書けんわ、この手の話は。 申し訳ありませんが、北方さんの男っぽいキャラと酒場というシチュエーションから「オトナ」の想像をしてみてくださいな。…それにしても、いかにも豪放磊落な北方さんと、ことミステリーに関してはいつも真剣な島田さんの対談らしくて、ある意味で微笑ましいエピソードでもありました。 そうこうしているうちに、拙作の話になりました。島田さんが出されたばかりの『摩天楼の怪人』は1921年のニューヨークで起こった怪事件を扱っていて、拙作『剣と薔薇の夏』は1860年のニューヨークが舞台。そのあたりからニューヨーク史談義になったのですが、私のほうは、このときとばかりに創作上の悩みを持ち出してみたくて仕方がない。このときには、もうお人柄もわかっていたので、何でも教えて戴けるんじゃないか、とだいぶ図々しくなっていたようです。 思ったとおり、いろいろ貴重なアドバイスは戴きましたが、なかでもびっくりしたのは、最後に披露してくださった2つの「極秘テク」。ミステリー作家志望者、および新人作家は心して聞くように…と言いたいところなんだけど、もちろんその内容そのものはここでは書けません。 「なんだよー、もったいぶりやがって」と言われても困るんだなあ。だって、そのテクの開発者は島田さんなんだから、いわば特許権は島田さんにあります。せっかく御好意でお聞きしたものを私が勝手に一般公開するわけにはいきませんもの。 テーマ的にいうと、ひとつは「作品を量産するための方法」、もうひとつは「ボツにしたアイデアを活かす秘訣」。このうち「量産」については、なるほど、そんなふうにやるわけかー、という驚きはありましたが、では私にもそれができるかというと、正直やや微妙です。そもそも島田さんクラスの才能があればこそ…という要素もあるので、できるかどうかはわからない。私の手には余るhigh tech weaponかもしれませんね。まだカーヴも投げられないのに快速フォークの投げ方を教わったような、とでも言えばいいのかな。 でも「ボツアイデア再利用」のほうは、これはもう、ズバリこちらのマトに来ました。そうそう、そういうことを知りたかった!という感じ。よく料理番組でプロの板前さんが、味がぐんと良くなる簡単な秘訣をちらっと教えてくれることがあるじゃないですか。あれです、あれ。まさに目からウロコが…ってやつですね。 じつは、このボツアイデア再利用テクは、今度の新作でも早速使わせて戴いてます。どんなボツアイデアを、どこでどんなふうに再利用しているか、それは読んでみてのお楽しみ…というわけで、最後は自作PRになっちまいましたが、いやぁ、これぞ究極の資源の有効利用かもしれませんよ。なにしろホラ、小説書きなんてのは、アイデアと時間だけが資源なんですから。 |
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