ミステリー作家戸松淳矩 あさっての日記

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help リーダーに追加 RSS 島田荘司さんに創作テクを教わった話(2)

<<   作成日時 : 2007/04/14 03:19   >>

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かねがね島田さんがファンサービスに熱心なこと、後進のために惜しみなく力添えされる方だということは耳にしていました。新本格の若い作家がデビューするについて、島田さんが先導の役を買って出られたことはミステリー界ではすでに伝説となっていますからね。
 だからtrick+trapの店内で20分ほどお話しさせて戴いただけで、私はもう「島田伝説」の一端に触れたような気になっていました。そこでは、たしか『摩天楼の怪人』の創作秘話を聞かせて戴いたんだったかな。へぇー、と思うような裏話もあって、初対面の者によくそこまでお話ししてくださるなあ、と感じ入ったものです。

 やがて腰を上げた島田さんが、戸川さんに辞去の挨拶をされます。私も「それでは、これで」と頭を下げかけたのですが、そこで思いがけないひと言が。
「よかったら、そのへんでお茶でも飲みながら、もう少しお話ししましょうか」
 …よかったらも何も、こちらに否応のあるわけがありません。たとえそのあとにどんな予定が入っていたって、そりゃO.K.しますよね、ミステリーファンだったら。もちろん二つ返事で、私は小躍りする気分のまま島田さんの後ろ姿を追いかけましたよ。

 じつは正確を期すと、前のエントリーでは「島田さんとサシで」と書きましたが、このとき島田さんにはもうお一人、お連れがあった。宮田さんとおっしゃる長いお付き合いのご友人で、しかも大の島田ファンという方です。しかしこの宮田さんがまたよく気のつく方で、私がすっかり舞い上がっているのを見てとられたのか、ご自分はほとんど口を挟まない。おかげで島田さんにお尋ねしたいことはほぼお訊きすることが出来ました。それでいて気のつかないうちに、コーヒーとケーキの支払いは、宮田さんの手ですっかり済ませて戴いている。まったく、持つべきものは良き友ですよねぇ。

 このときお伺いしたお話は、もしすべて書くとしたら、たぶんエントリーの10本分にはなるでしょう。でもまあ、そういうわけにもいかないわけで。…で、差し支えのないところだけ、ちょっとご紹介してみると、まず「1日に何枚くらい書かれますか?」という問いに対するお答えは、こうでした。
「うーん。そのときどきですけど、書く日は平均して20枚ってところですか」
 …ははあ。20枚。さすがに多作なだけあって速筆です。私なんか書ける日でも5、6枚だもんなぁ。でも、それだけ書くと、翌日に読み返して手を入れるのが大変なんじゃありませんか?
「いいえ。僕は原稿の直しが好きなんですよ。今日はあそこを手直しするかな、と思うと楽しくてね。原稿を書くより書いたものを直すほうがずっと面白いから」
 …ええーっ! 直しってメンドいし、時間食うし、つまんないじゃないスか。
「そうかなあ。ぼくは楽しいですよ」
 …うーむ。プロってのは、そういうものなのか。やはり私なんかとは意識がだいぶ違ってます。直しをめんどうと思うのが、そもそも心得違いなんでしょうか。…で、文章を書くとき、いちばん気をつけてらっしゃることは何でしょう?
「文章って、結局リズムだと思うんですよ。ですから、リズムを崩さないことかな」
 …ふうむ。リズムかぁ。なるほどー。さすがに音楽にも造詣深いだけに、リズムという言葉にも含蓄があります。

 そんな、大学のミス研部員がするみたいな質問をいくつかしたあと、最近の日本のミステリー作品について雑談になりました。島田さんはロスから帰国されたところだったので、直近の状況はまだよくご存じなかったようです。話題に出たのは『重力ピエロ』とか『葉桜の季節に君を想うということ』とか…。どんな作品かということを私がざっとご説明して、どんなふうに批評されているかについてもお話ししました。
 島田さんは興味深くお聞きになっていましたが、『重力ピエロ』について、
「タイトルだけ知っていたので、なにか重力に関するトリックを使った作品なのかなあ、と思っていましたが」
 と言われたんですよ。それが、いかにもシマソーらしかったな。  …この話、さらに続きます

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