ミステリー作家戸松淳矩 あさっての日記

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help リーダーに追加 RSS 有栖川さんとジュンク堂に行って

<<   作成日時 : 2007/03/21 03:20   >>

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作家のなかには、信じがたいほどの速読家がいて、栗本薫さんなどはデビュー前にすでに2万冊を読破していたんだとか(未確認情報ですが)。栗本さんが乱歩賞でデビューされたのは、たしか25歳のときですよね。5歳から読み始めたとして、年に千冊のペースですか。そこまでいくと、もう笑っちゃうしかありません。でも年に500冊なら読むという人は何人か知っていますから、千冊読める人が他にもいるかもしれない。うらやましい限りです。

 というのも、私は遅筆なうえに遅読で、そのくせ読んだ内容が記憶から抜けるのだけは速い、という三重苦。たんに頭が悪いだけだろ、と突っ込まれても一言もありません。ただひとつ、遅読の良いところは、無駄な本を買わなくなること。どうせたくさんは読めやしない、とわかっているので、読むべき本を選択するときに慎重になります。少ししか読まないのに、読んだ本が地雷だったら受ける損害は甚大なものになる。当然、確かめ確かめ、質屋のオヤジみたいにケチケチ買うことになります。
 でも速読家は違います。一昨年でしたか、有栖川さんが大阪堂島のジュンク堂で本を買われるところを見たことがありますが、すごい買い方でしたねー、これが。まず、売り場に入るなり、いきなりカゴに手を伸ばす。ここからして、もう「プロは違う!」の世界だもんなぁ。私なんかは1冊、2冊と抱えていって、たまたま5冊くらいになったら、はじめてカゴを探しますな。まあ、そんなこと、めったにないけど。ところが有栖川さんは最初から、疑いもなくまとめ買いするつもりで来られている。さすがです。
 そのときは30分足らずのあいだに、20冊はお買い上げになっていたと記憶しています。小説はもちろん、評論や純然たる学術書まであって、分厚いウールリッチの研究書をためらいもなくカゴに入れるのを見て「…すげぇー。あんなの、読むんだ」とビビった覚えがあります。たまたま評論家の佳多山大地さんがそこに来合わせて、やっぱり同じ本を買われていました。私もウールリッチの作品なら読みますけど、研究書までは手が出ません。専門家は違うもんだな、と感心しましたね。

 このときは大阪で取材があって、戸川さんに案内して戴いたのですが、こちらの取材が終わってから大阪駅前のヒルトンホテルに行くと、そこへ有栖川さんがふらりと現れた。有栖川さんという方は、いつも飄然としていて、この人が慌てるとか、うろたえるというところはちょっと想像しにくい。ヒルトンのロビーでは「ミステリーズ!」新人賞についてのお話がおもしろくて、これ部外秘なんだろうなあ、と思いつつ、つい聴き入ってしまいました。
 もう時効なので書きますが、選考会を前にして、有栖川さんはすでに受賞作に確信を持っていらっしゃったようで、言葉の端々からそれが伺われました。戸川さんが
「綾辻さんも、今年はいいのがある、と言っていましたよ」と言うと、
「たぶん、彼も同じ作品を推すと思いますよ」と悠然と答えます。
 それがその年の受賞作となった、高井忍さんの「漂流巌流島」だったんですね。もちろん選考会まではどの作品を推すか、委員は公言できません。だからその場で特定はできなかったのですが、あとで選評を読んでみると、有栖川さんの予測通りに決着したようです。

 そのあと、歩いてジュンク堂に向かったのですが、ここでまた、新人(?)作家の私には「へぇー」と思うような出来事がありました。

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